MBAで「ボヤいている人」には理由がある
三つめの仮説は「行ったMBAが悪かった」です。
多くの組織で、派遣生は1年以内にテストで結果を出して受験に合格する必要があります。私費の人たちが数年かけてTOEFLを数十回受けている事例と比較すると時間が足りません。あるMBAホルダーの言葉が印象的です。「多少命を削るくらいのコミットメントが必要」。そのくらい、日本人にとってのMBA受験は困難なものです。
派遣留学制度に選ばれたことで満足していたり、仕事で忙しいと言い訳してみたり、殺人的な業務を受験中に突っ込まれたり…。結果として十分なTOEFL、GMATのスコアを得られず、印象的なエッセイを書けず、準備不足で面接に臨んで無名のMBAへ。もちろん同級生やチームメイトにも当たり外れがあり、私は他の学校の授業に出たわけではないので分かりませんが、少なくとも世界で名前が知られているようなMBAでは「勉強も課外活動もしっかりやる、人間的に優れたタレントが多い」と感じます。「チームに貢献しない奴だらけ!」「MBA、来てみたらガッカリだった…」とボヤいているのは、残念ながらそうした人材に会う環境に恵まれなかった人たちでしょう。
以上、「派遣留学が陥る3つのワナ」に照らし合わせて、どれにも当てはまらないのにやはりMBAは役に立たなかった、となったときに初めて「MBAは取るに値しないのか」を検証すべきでしょう。私にとって2年間の学びは非常に大きく、マーケティングに偏っていた知識を経営戦略、組織論、財務・会計に広げ、世界のどこでも誰とでもビジネスするコミュニケーションスキルを身につけ、それらを実際の企業とのプロジェクトで実践し、「クリエイティビティに優れた日本の広告業界のグローバル化」を突き進める準備はできたかな、と感じています。
最後に、US Newsの調査によれば、Fortune 500のCEOが「約200のMBAの学位、約140のMBA以外の大学院レベルの学位を持っている」とのことです。MBAホルダーとそうでない人の人口比を考えれば、学位の重複を考慮しても6~7割が「MBAやそれに準じる大学院の学位を持っている」というのはなかなか大きな数字で、必要なければとっくの昔に消えているのではないでしょうか。(室健)