先日、衆議院で超党派議員の手により、過労死防止法案が可決された。なんでも、過労死を防ぐためにこの問題に対する国の責任を初めて明記し、過労死の実態や防止策の調査を行い、過労死防止対策協議会を設けたり、民間団体を支援したりするという内容だ。
はたして本法案は具体的な効果を上げることが出来るだろうか?
そもそも、過労死はなぜ起こるのか
その前に、過労死が生まれるメカニズムを整理しておこう。
企業が雇用調整する手段としては2種類の方法が考えられる。世界的にみて一般的なのは、従業員の人数で調整するというもので、忙しかったら人を雇い、暇になったら誰かをクビにするというものだ。当然ながら流動的な労働市場が前提となり、必ずしも雇用が安定しているとは言えないけれども、少なくとも普通の人が倒れるまで働かされることはない。
もう一つは、すでに働いている従業員の労働時間で調整するというもので、忙しければ残業時間が増え、暇になったら定時で帰るというスタイルだ。こちらは(既に正社員の椅子に座っている)従業員の雇用はとても安定する一方で、忙しい時は月100時間でも200時間でも残業させられることになる(建前上の法律論は別として)。
もちろん、終身雇用の日本は後者であり、いっぱい残業できるように規制も緩やかにしてある。いうなれば過労死は終身雇用の副産物みたいなものなのだ。だから、過労死をなんとかしたいなら、終身雇用自体にメスを入れるしかない。
そういう観点から本法案を眺めてみると、過労死防止月間や調査委員会の設置だの、白書を毎年作るだの、見事に本質を回避した内容であるのがよくわかる。