「社長銘柄」新規取引先こそ、眉に唾つけて慎重審査を
1:支払プロセスには、ダブルチェックの仕組みがガッチリ組み込まれているか?
A社では、発注担当者が自ら納入物を検収し、仕入先からの請求書も受け取って、自分で支払処理までできる状況になっていたと考えられる。不正事件の多くは、「ルール上はダブルチェックになっていたが、実際は担当者に任せきり」という状況で発生している。特に社長や「できる」社員に対してはチェックが甘くなりやすいので要注意だ。
2:子会社社長や地方の支店長などが、やりたい放題になっていないか?
親会社とは業種が異なったり、地理的に遠かったりする拠点では「治外法権」が生じやすい。B社のように、現地で社長を雇う場合も要注意だ。親会社の経営陣や内部監査部門がリスクをしっかり見据えて、コミュニケーションを密にとりながら厳しい目を向ける必要がある。
3:新規の仕入先や外注先の審査基準は明確か?相手の実態を把握しているか?
A社のように、担当者の言いなりで仕入先を決めてしまうのはもっての外。また、社長や支店長が取ってきた案件であっても、ルールどおりに厳正なチェックをしないと痛い目に遭いかねない。いや、「社長銘柄」の新規取引先こそ、眉に唾をつけて慎重に審査することが必要だろう。
4:役職員の副業に関する明確なルールはあるか?
副業は原則禁止とし、例外的に認める場合は、必ず事前に申告させて、利益相反の問題が生じるリスクを吟味すべきである。無届の副業に対しては、懲戒処分を下すという規定を明確にしておくことも必要だろう。
不正リスクの評価と対応は、転ばぬ先の杖である。役職員を信頼はするが決して放任はしない。そのさじ加減が大切だ。(甘粕潔)