社長の堕落の一歩「バレなければいい」 そして最後は悲劇になる

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ルール違反やモラル違反の誘惑

   実はB社では少し前にこんなこともありました。売上ダウンの最中、ポッと出の同業ライバル企業に大手先からの受注をさらわれ、社長はかなりイラついていました。彼はそのライバル企業の弱点を知りたいと、企業調査レポートを有料で購入します。そこでライバル社が借入過多で苦しんでいることをつかむと、彼は「業界筋から小耳にはさんだのですが…」とその情報を発注元大手企業の担当者に耳打ちしたのです。担当者は「そりゃまずい。発注先になにかあったらこちらも困る。貴重な情報をありがとう」と感謝されたと、得意顔で話していました。感心しないやり方での受注の揺り戻し狙いが透けて見えます。その話を聞いた私は、「そのやり方は信義則に反する」と言ったのですが、真剣に取り合う風はありませんでした。

   この一件と弊社の件の二つに共通することは、まさにキーオ氏が言うところの「反則すれすれで戦う」です。この二つのケースから分かることは、売上ダウンの中でB社社長の頭の中にある行動基準に「これは正しいことなのか否か」は既になく、「これは合法なのか否か」から「これは、バレないか否か」に移行しつつある状況なのです。このままでは、過去の「反則すれすれで戦う」企業がそうであったように、「貧すれば貪する」がやがて「貧すれば鈍する」となり、ブラックではない企業もこうして、グレーやブラックに変質していくのです。B社もまた同じように悲劇への道をたどってしまうのでしょうか。

   企業活動には最低限の暗黙ルールやモラルが存在します。もちろん、企業が好調な時には全く気になることもなくあたり前のこととして守られるルールやモラルですが、少し調子が悪くなると「合法と主張できればいいだろう」「バレなければいいだろう」とルール違反やモラル違反の誘惑が出てくるのです。一度犯してそれがバレなければ、気づかぬうちに判断基準そのものが変質してしまうことも間々あることで、企業破たんは経営者の判断基準変質の延長線上にいとも簡単にやってきます。B社社長にはなんとしても今の過ちに気づかせたい、私は切にそう思っています。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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