グループスタディ、企業との関わりがモチベーションを高める
ふたつめは、学生と学生の「双方向性」です。当然と言えば当然ですが、芸術家や小説家にでもならない限り、ビジネスでも研究でもチームワークが基本。カリキュラムにグループスタディが組み込まれていること、これが学生を勉強に駆り立てているのではないでしょうか。例えばチームで予習してクラスでプレゼンする、チームに数十ページに及ぶ最終レポートを課すことで「皆でがんばらないといい成績は取れない」という仕組みがあります。
こうした話をすると「名前だけチームに入れてタダ乗りする人が出てくるのでは?」と聞かれます。人数が多くなるとサボる人が出てくることを「社会的手抜き(Social Loafing)」と言いますが、この問題は、チームでの学習内容を授業で尋ねることでメンバーの参加度を測る、あるいは匿名でチームメンバーの相互評価を行うことである程度解消します。
最後は、大学と企業の「双方向性」です。本連載で触れてきたように、ミシガン大学MBAでは「机上の空論は役に立たない」という信念のもと、企業にコンサルティングしたり、CEOにプレゼンを行ったりする機会が豊富にあります。こうしたチャンスは学生にとって魅力的で、人気授業になりやすいです。プロジェクトでの活躍が認められて就職につながったという事例まで聞きます。
他の学部でも同様の取り組みは随所に見られますが、企業はなぜこうした機会を歓迎するのでしょうか?それは企業と大学のWin Winな関係にあります。企業側にとってはアメリカのトップ校は最重要リクルーティング拠点で、そこで自社の名前を売ることが優秀な人材の確保につながります。また、MBAであれば最先端の経営ナレッジを外部から導入するきっかけともなります。一方、大学側はこうした企業に卒業生を送り込むことによって就職実績をつくることができ、教授は企業とのプロジェクトで名声を高められ、学生は学んだ知識を実践する機会が得られます。
皆さんご存知のとおり、日本企業では新卒一括採用が主なリクルーティングの機会で、学生を教育するのは入社してからでいい、という文化がありました。そして、より優秀な学生を採用したい、企業と学生のマッチングを高めたい、という理由でインターンシップも一般的になったと感じます。しかしこれからは、国内外企業、NPO・NGO、国際機関、ベンチャー、さらには卒業後すぐ起業する人たちとの「グローバル採用競争」の時代。インターンよりさらに「上流」での交流、つまり大学と企業の「双方向性」がより求められるのではないでしょうか。
いかがでしたでしょうか?大学生の「本質」を捉えた勉強を促す仕組みに関する議論が進むことを望みます。(室健)