「知的好奇心を喚起する」仕組みを
学生はルールに則ってやっているし、効率よく勉強したくなるのは当然です。何が言いたいかといえば、そもそも全く勉強しない大学生にハードルを設ける意味はあるが、「点数を取ることに長けている集団」に成績の重要性を説いても本質的な解決にはならない、ということです。アメリカの学生がよく勉強するのは、「成績を重視しているから」だけではなく、それ以上に「好奇心を刺激し、勉強に向かわせる仕組みがあるから」ではないでしょうか?今回は私がアメリカの大学で感じた、学生を勉強に向かわせる「3つの双方向性」について紹介します。
ひとつめは、教授と学生の「双方向性」です。アメリカの大学では、「研究の質」だけでなく「授業の質」でも教授が競争にさらされています。学期末には、匿名によるオンラインの授業評価が全学で実施され、「教授はよく準備していたか」「テキストは良かったか」「きちんと学生に対応したか」「授業は期待を上回ったか」を調査します。結果は数年間に渡って公表されて、必修の授業で評価の低かった教授は翌年交替させられ、また、学生は過去の評価を参考に選択授業で何を取るかを決めます。そのため教授に、学生は「教え、評価する対象」にとどまらず「楽しませるべき顧客」だという意識が根づいています。例えば学期の半分が過ぎる頃になると学生に「中間フィードバック」を求め授業を軌道修正したりします。
教室の形が異なる点も挙げておきたいと思います。教室は(写真)にあるように教授を180度取り囲む形になっています。これは予習を大前提として、授業は双方向な議論の場であることがはっきりしているからでしょう。こうした評価に直結した「双方向性」により、授業の質が磨かれていきます。無味乾燥になりがちな「統計」「会計」の授業が「いつやるの?今でしょ!」の林先生も顔負けのエンターテインメントになっているのには本当に感動しました。