無理な要求にしっかりとノーと言える者こそが…
「バカモン!君は現場の焦りに毒されて大切なことを見失っているぞ。総務部長がそんなことでどうする!無理な要求にしっかりとノーと言える者こそが、うちの店長候補としてふさわしい人材じゃないのか。盲目的に無理な指示を受け入れる者は、自分が人の上に立った時に、下に対して同じような無理強いを平気ですることになる。結果的にタダでさえ過酷な飲食の就労現場で、経営の考えとかけ離れたブラックな環境はこういうスタッフによって作られていくんだよ」
Fさんは、社長の話に半ば納得のいかない思いで、「おっしゃることは分かりますが、ただ今はそんな人材の質にこだわっていたら、せっかく応募してくれた人材も採り逃してしまい、店が閉店に追い込まれるのではないかと思いますが」と反論します。社長は一言、「いいから言ったとおりにやれ。これがうちの方針だ。それで思う人材が採れなくて店が回らないのなら、休業もやむなしだ」と。
Fさんは、今ひとつ納得がいかない思いながら社長のやり方に従いました。採用はFさんの予想通り苦戦します。店長候補の穴が埋まるまでは、本部の管理職が現場に入ってつなぎ、なんとかかんとか休業は免れながら店長候補の人材確保に努めました。結果、時間はかかりながらも社長の指示に従った採用方針を守り抜いたのでした。