前回は、日本のホワイトカラーの生産性の低さを指摘した。日本のホワイトカラーは米国に比べて生産性が70%程度であるにもかかわらず、にたような賃金をもらっている。
これは、日本が凄いのではなく、単にサービス残業ぶんを簿外にしているだけだ。日本人は額面8時間で労働していることになっているが、実際は12時間近く働かないと、先進国並みの所得を生み出すことができない。
サービス残業は「計算外」
しかし労働時間は8時間ということになるので、4時間分近くはサビ残として、帳簿外処理(飛ばし)をするしかない。
この事情を無視して、労基法を厳格適用しても、結果的に所得水準が大幅に下がるだけだ。生産が落ち込むか、生産は同じなのに残業代コスト分がかさんで経営が苦しくなり、従来の所得水準を維持できなくなるからだ。
では、日本企業は今後はサービス残業を撲滅し、労基法を守ることが出来る様になるのだろうか。
所得 ≒ 生産性 × 労働投入量
としたとき、労働投入量を8時間でまもるとしたら、調整できる数字は2つしかない。
労働投入量を減らす代わりに、所得を減らすか、生産性をあげるかだ。
ひとつは、本当にサービス残業を撲滅し、そのかわり、生産性に応じた賃金、つまり現在の70%の規模に縮小すること。
年収500万円、実質約12時間勤務というのが、だいたいの平均のところだとおもうが、それを、8時間勤務サビ残なし、年収350万にするということ。これはこれでそういう選択肢もある。
生産性を最大に
もう一つは、生産性をあげるということだ。8時間で、同じ所得を得るにはおよそ3割位上の生産性の向上が必要になる。
ちなみに、外資ではホワイトカラーでもそれなりに8時間で仕事が終わっているところもある。労基法はしっかり守る。ただ、守る代わりに、余裕がなく、キツキツであって、常に生産性を最大にするように求められる。
いらない人員は解雇して、きちきちの人数でやれば、組織全体の労働生産性は上がる。基本的に彼らは生産性が低い部門や、生産性が低い人員のカットが最初に来る。
ホワイトカラーではないが、アマゾンの倉庫などでは、海外メディアなどによると秒単位で、手に持った端末が作業員の行動を指示する。すこしでも遅れが目立つと集計されて、チェックされて指導が入るという。生産性をコンピュータに監視されている形だ。
キツキツの職場で、一秒のすきもなく超効率的にはたらけば、生産性もあがり、少ない人数でしかも8時間でいままでどおりのことが達成出来るだろう。
もちろん非効率に12時間ちかく働いてもいい。どちらがいいとは言わない。(大石哲之)