「私、会社やめるんだ」。つい先日、有名企業に勤めている友人が、退職しました。どうやらメーカー勤務の彼が地方転勤になり、ついていくことにしたらしい。「え~、あんないい会社、辞めちゃうの!?」なんて少し驚いたものですが、彼女のライフコースはかなりメジャーなもの。多くの女子は、20代の半ばで「転機」を迎えるのです。
女性は、男性よりも早くに将来のキャリアを意識し始めます。転職サービス「DODA(デューダ)」の調査(2012年)によると、女性が転職を考え始める年齢のピークは24歳と25歳。男性より2年ほど早いのです。
女性雇用のM字型カーブ
女性が第一子を産む年齢は、平均30.1歳(2013年版少子化社会対策白書)。出産をきっかけに過半数の女性が退職する(厚生労働省調査、2010年時)ことを考えると、今どき女子のライフコースは「20代で一度転職、アラサーで結婚、30~32歳で子どもを産んで退職、または時短勤務」という感じでしょうか。
30代女性の労働力率は、20代や40代と比べてぐっと低くなります。いわゆる雇用のM字型カーブ。「うちの会社に、フルタイムで働く30代女子ってあんまりいないな~」という人も多いのではないでしょうか。結構な数の30代女子は家にいて、子育てをしているのです。もしくはパート、派遣などの非正規雇用。
「女性の活用を進めるべきなのに、出産で過半数の女性が退職を余儀なくされるとは、由々しき事態である」。学者や政治家たちのボヤキが聞こえてきそうです。でも、すべての企業がそのように考えているとは限りません。なかには、アラサーで退職していく女子たちについて、企業にとっておトク=「コスパがいい」存在だと見ているところもありそうです。
若いうちにガーっと働き30歳でパッと退職
30歳以下の若手は、中高年層と比べ、安い賃金でバリバリ働いてくれます。企業にとっては、人件費のかかる窓際中高年より、若いうちにガーっと働き30歳でパッと退職していく社員の方が都合が良い――そんなケースも少なくないのかもしれません。
出産を機に30歳前後で退職する女子は、企業にとっては「コスパがいい」存在と言えそうです。20代のうちは安いお給料で、男子と肩を並べて一生懸命働いてくれます。そして、年齢給が上がり始める30代半ばまでに、パッといなくなる。
彼女たちは、やる気のない「中高年社内ニート」にはなりません。働くだけ働いて、給料が上がる前にいさぎよく辞めていく。会社にとって、何とおトクなのでしょう。多くの場合、退職されても人材の穴埋めはいくらでもできます。社長すら公募される時代。平社員の仕事で「その人にしかできない」業務など、ほとんどないのではないでしょうか。
女性の方も、そんなつまらない仕事しか与えてくれない企業にはさっさと「おさらば」しようとしています。転職活動にいそしんだり資格をとったり、女性としての自己実現を目指して、婚活や妊活に励んだり。休んでいる間にスキルを身に付けて、復職に活かそうと目論むケースもあります。
育休中に取った資格を活かして転職!
女性誌では、「育休中に取った産業カウンセラーの資格を活かして転職!いつかは独立を目指しています」なんて紹介記事をよく見かけます。自己実現のためにアラサーで会社を辞め、別の道を探る女子は、決して珍しい存在ではありません。
だってこのまま会社員を続けていたって、昇進の道はたかが知れているから。男性を含めて、「7割は課長にさえなれない」時代です。古い体質の会社に見切りをつけるなら、早いほうがいい。
若手社員にコスパを求める企業と、自己実現したい女子の思惑。この2つが一致した結果が、いわゆる日本のM字型カーブなのでしょう。(北条かや)