重要なのは「いかに行動で示すか」
Fさんはその経験をM社のサービス改善に活かし、社長の言う「意識改革」をいかに具体策に落とし込んで「お客さま第一」を来店客に伝えるかを考えました。全店長からクレームの実態をつぶさにヒアリングし、「電話は必ずスリーコール以内で取る」「お子様向けサービスのご案内など、お子様連れ歓迎の姿勢を示す」「どんなオーダーも可能な限り前向きに対応することをアナウンスする」等々の具体的な行動ルールを決めて、現場の習慣づけをさせることにしたのです。
Fさんの狙いはズバリあたりました。銀行よりも多少時間はかかりましたが、辛抱強くルールを守らせる行動指導を続けることで2~3年後には顧客満足度が非常に高い店として全国的に有名になり、同業の見学が相次ぐまでになりました。
「要するに、具体的な行動だけがお客さまに直接訴えかける方法なのだってこと。例え社長が社員の意識改革を求めていても、お客様が評価するのは行動だけですから。いかに行動で示すかなのです。この一件以来、私は何事においてもそれを心掛けてきたのです」
社長の要望をいかに顧客の要望に「通訳」するか、それが社長参謀役の役割である―。
Fさんが言うところの『トップの通訳』とはそういう意味であったかと、甚く納得した次第です。(大関暁夫)