「残業チキンレース」に巻き込まれるな 「時間外手当ゼロ」のメリットとは

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より高い"成果"を追求


   一方で、従業員全員が年俸制で時間外手当の発生しないB社という会社があるとする。


   完全な成果主義型で、出退勤時間も自由、年間の評価によって大きく年俸が上下する柔軟なシステムだ。同じく実質賃金の低下したB社だが、B社の従業員は残業時間を意図的に増やしたりなんてことはしない。そんなことをしても一円のトクにもならないからだ。


   代わりに、彼らはより高い"成果"を追求すべく、本業に注力したり、スキルアップに時間を割いたりするはずだ。もちろんその過程で一定の残業時間は増える可能性はあるし、みんながみんな成果が出せるとも限らない。でも、長い目で見れば、会社の業績がアップするのは間違いなくB社だろう。そしてそれに貢献できた従業員には、年俸なりボーナスという形で、その一部が還元されることになる。


   あなたがこれから入社するとすれば、どちらを選ぶだろうか。ひょっとすると「自分は多くは望まないから、厳しいB社よりA社でマイペースで働きたい」という人もいるかもしれない。でも、A社でマイペースで働くあなたの財布は、ぎらぎらと残業に精を出す同僚たちへの支払いのため、ずいぶん薄くなることだろう。自分の担当分をきっちり定時で終わらせて退社するあなたは、まさに「正直者はバカを見る」の典型だ。


   それが嫌なら、対抗策は一つしかない。それは、あなた自身も残業サークルに入って、同僚たちより一分でも長く残業することだ。同僚たちの平均残業時間を上回ることが出来れば(それが幸せかどうかはともかく)めでたくあなたも「残業でトクをする側の一人」である。ギブアップして早く帰ったやつが損をする仕組み。これを筆者は"残業チキンレース"と呼んでいる。


   でも、一回きりの人生、どちらにせよ一生懸命努力するんだったら、できるだけ高い成果を上げつつさくっと帰れる方に賭けた方が有意義だと感じるのは筆者だけだろうか。


人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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