「残業チキンレース」に巻き込まれるな 「時間外手当ゼロ」のメリットとは

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時間外手当は増えても、人件費の総額は増やせない


   ここで重要なのは、彼らA社の社員が残業したからと言って、残業時間に比例して会社の業績が上がるわけではないということだ。工場で単純な製品を量産していた明治・大正時代ならともかく、いまどきデスクワーク主体のホワイトカラーで、椅子に座っていればいるほど成果を上げられる人なんてまずいない。まして、残業のための残業ならなおさらだ。


   つまり、A社の時間外手当は増えても、人件費の総額は増えない、増やせないことになる。というわけで、その分、ボーナスや基本給が減って帳尻があわされることになる。筆者から見ると「やったぜ!今月は残業代だけで20万ゲットだぜ!」と青白い顔をして喜んでいる人は、朝三暮四のお猿さんにしか見えない。


   ついでに言うと、少なくない数の従業員がそういう方向に走ると、経営側から見れば「あれ、なんでこんなに人件費払ってるのに結果出ないんだろう。しょうがないな、来年からはもっともっと昇給もボーナスも抑えとかないと」と考えざるをえなくなる。実は、これもまたなかなか給料の上がらない理由の一つではないか、というのが筆者の意見だ。


人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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