時間外手当は増えても、人件費の総額は増やせない
ここで重要なのは、彼らA社の社員が残業したからと言って、残業時間に比例して会社の業績が上がるわけではないということだ。工場で単純な製品を量産していた明治・大正時代ならともかく、いまどきデスクワーク主体のホワイトカラーで、椅子に座っていればいるほど成果を上げられる人なんてまずいない。まして、残業のための残業ならなおさらだ。
つまり、A社の時間外手当は増えても、人件費の総額は増えない、増やせないことになる。というわけで、その分、ボーナスや基本給が減って帳尻があわされることになる。筆者から見ると「やったぜ!今月は残業代だけで20万ゲットだぜ!」と青白い顔をして喜んでいる人は、朝三暮四のお猿さんにしか見えない。
ついでに言うと、少なくない数の従業員がそういう方向に走ると、経営側から見れば「あれ、なんでこんなに人件費払ってるのに結果出ないんだろう。しょうがないな、来年からはもっともっと昇給もボーナスも抑えとかないと」と考えざるをえなくなる。実は、これもまたなかなか給料の上がらない理由の一つではないか、というのが筆者の意見だ。