政府の産業競争力会議で検討されている労働時間管理の規制緩和、いわゆる「残業代ゼロ法案」に対して、ネットを中心に反対論が根強くわき起っているようだ。どうやら多くの人は、以下のような心配をしているらしい。
「残業代をもらえなくなると自分が損をすることになる」
「無制限にいくらでも長時間残業させられることになるかもしれない」
現実にはまったく逆で、いまどき時給で賃金を払ったりなんかしているもんだから多くの人は損をしているし、日本の労働時間はドイツやフランスより年間600時間も長いのだ(※1)。
残業すればするほど貧乏になる仕組み
典型的な終身雇用、年功序列型のA社という会社があるとしよう。もちろんボーナスや昇給は査定成績によって若干の差がつくが、基本的には横並び色の強い賃金制度が採用されている。
エネルギーコスト上昇からくる物価高と消費増税により、社員の実質賃金は5%も下がっている。もちろん、自動車大手なんかとは違いA社にはベアもない。そんな中で給料アップを勝ち取るにはどうすればいいか。
「来年には定昇にくわえてみんなのベアも実施できるよう、会社の業績アップのために骨身を惜しまず働くぞ!」という愛社精神あふれるサラリーマンもいるかもしれない。でも、ネットにあふれる残業代ゼロ法案反対論を見ても明らかなように、きっと以下のように手っ取り早く解決してしまう人の方が多数派だろう。
「今月から月30時間残業をノルマにするぞ」
「うちは子供が私立に入ったから残業50時間が目標だ。とりあえず土日どっちかは出勤かな」
こうして、社員の間には自然と"生活残業"の輪が広がっていくことになる。