知る人ぞ知る鉄道ダイヤ印刷のトップメーカー
一方、昭和22年(1947年)創業のセキュリティー(偽造防止)印刷、特殊印刷会社である昇寿堂(東京都中央区新富)は、知る人ぞ知る鉄道ダイヤ印刷のトップメーカーだ。鉄道マンが携行する鉄道ダイヤは始発から終電までの運行情報がびっしりと書き込まれ、印刷の長さは4メートルにも及ぶ。これをコンパクトに折りたたんで携行するわけだ。この印刷は簡単ではない。長尺印刷ができなければ、そもそも作れないし、どのように構成し、どのように折りたたんで使いやすくするかといったノウハウが集積されている。
同社はまた、セキュリティー印刷においても官公庁や自治体から大口の受注を得ている。偽造防止にはコピーガード、ホログラム、実線グラデーション、マイクロフォント、ラインスクリーン、レインボー、透かしなどのさまざまな技術を要する。社員証、会員証、健康保険者証、サッカーや野球などの入場整理券などの幅広い分野で、こうした技術が使われている。同社は東通研(東京都豊島区)が開発した低電力型紫外線照射装置を導入し、電気代を約70%削減するとともに、二酸化炭素(CO2)排出を大幅に減らしている。印刷業界は紙の削減を受けて、経営環境は楽ではないが、攻めの経営により老舗が輝き続けている。(管野吉信)