ロールモデルはいないけど、憧れは小倉優子
「ゆるキャリ」を目指す女性たちから人気なのは、先にも触れた、ママタレの小倉優子さんです。現在30歳の彼女は、「こりん星」からやって来たグラドルとして活躍した後、ヘアメイクアーティストと結婚。一児の母となった今は、仕事をセーブしつつ、毎号のように「おしゃれなママ向け雑誌」の表紙を飾っています。レシピ本は12万部超のベストセラー。家庭を大事にしつつ、自己実現的な仕事をする彼女を「いいなぁ」と思うアラサー女子は多いのです。夫が「実業家」や「野球選手」などではなく、ヘアメイクアーティストというのも身近な感じで好感がもてる。
ただ、それはあくまで淡い憧れの「いいなぁ」であって、ロールモデルとして彼女を設定して、それを目指すというわけではありません。芸能人だからこそ実現可能、といった側面を冷静に分析しているのでしょう。
そもそも働く女性の多くは、「ロールモデル」なんて意識する暇もなく、目の前の仕事に追われているのが現状です。「ロールモデル、ロールモデル……」と呪文のように繰り返しているのは、◯◯アドバイザーやコメンテーターなど、「現場を知っているようで知らない人たち」だけなのかもしれません。彼・彼女らの言う「ロールモデル」って、実は「フルタイムで働きながら、子育ても頑張るロールモデル」だったりします。このようにやたらと「両立のロールモデル」にこだわる人たちのことを、「ロールモデル厨」と呼びたいと思います。
そんな「ロールモデル厨」の存在が、「キャリアに迷う女性」を増やしているのかもしれません。一見逆の立場の、「ロールモデルがいなくても、一生懸命頑張ればいいんです!」と励ます専門家たちも、かえって彼女たちを不安にさせているようにも見えます。若い女性が、「身近にロールモデルはいないけど、憧れは小倉優子」となるのも何となく分かる気がします。(北条かや)