「エリート女子」。それは、お嬢様育ちの高学歴、そして仕事もできるという「天が二物、ときには外見の美しさという三物を与えた」存在。今回は、そんなエリート女子が転職した際に出会う「派遣社員女子」との攻防について掘り下げてみます。
エリート女子の多くは、国内外の有名大を出たのち、国家公務員や外資系コンサル、投資銀行などに就職。彼女たちは、新卒のときから数年間、男性と肩を並べてがむしゃらに働きます。
実は苦手な事務作業
新卒で外資系コンサルに入ったA美さんは、ほぼ毎日、終電で帰宅できればいいほどの激務。やりがいはありましたが、30歳になったのをきっかけに「こんな働き方、ずっと続けられる?」と不安になったそう。A美さんは、働き方を見直そうと決意。中小メーカーの管理部門に転職します。年収は1000万円超から700万円にダウンしましたが、夜9時には帰宅できる毎日に幸せを感じています。
A美さんのように、周囲との競争に疲れたり、結婚や出産を機に「拘束時間の少ない仕事がしたい」と、異業種に転職したりするエリート女子は多いもの。そこで彼女たちは初めて、「細かな事務作業ができない自分」に気づくのです。
新しい職場のメーカーでは、A美さんのようなエリート女子は珍しい存在。彼女の華々しい経歴はすぐに知れ渡り、「どんなにデキる女性上司がやってくるのだろう」と、部下たちは興味津々です。ところが「デキる女性上司」であるはずのA美さんは、仕事内容の変化に驚きの連続。コピー機の使い方や備品の発注など、細かな事務作業が全くできないのです。
「テプラの楽しさ」を感動気味に語るエリート女子
「印刷の"ステープル"機能(自動で、用紙を仕分けホッチキス止めする)が分からなくて、バラバラの資料を1部1部ホッチキスで止めようとしたんだけど、分厚くて止められないのよ。結局、派遣の女の子に頼むことになっちゃって……」と語るエリート女子。自分より年下の派遣社員たちは、印刷の機能から裏紙の使い方まで、優しく教えてくれるそうです。
エリート女子であるA美さんと、派遣社員女子たちの年収には、2倍以上の開きがあります。人事部門で働く社員には、転職してくるエリート女子と自分の年収差も分かってしまう。簡単な作業のひとつもこなせないエリート女子を見て、派遣社員たちは内心、「高いお給料をもらって、こんなこともできないなんて……」と、呆れるかもしれません。が、それも、エリート女子の「経験値」が高すぎるがゆえのこと。これまで「上流」の仕事しか経験してこなかったため、細々した事務作業は苦手なのです。
「テプラって使ったことなくて、ラベル作るのにも一苦労よ。でもあれ、楽しいのね、派遣の子に教えてもらって……」と、感動気味に語るエリート女子。教える側は、「こんな簡単な作業、どうやって教えればいいんだろう。上司としてのプライドもあるだろうし……」と、エリート女子との接し方に悩むのでした。
過酷な競争に疲れ、挫折も味わって転職してきたエリート女子。彼女たちは転職先で、前の職場では感じづらかった「事務仕事」の想像以上の大変さ、ありがたみを感じているのです。その経験値の高さに由来する「不器用さ」を褒めてあげるくらいが、エリート女子の能力を引き出すにはいいのかもしれません。(北条かや)