今回は、日本に上陸して長い歴史を持つ外資系企業の「グローバル化」について論じたい。
ある有名IT企業は、80年代に日本に上陸して以来、日本市場を急拡大させてきた。今では、日本のシステム業界では不動の地位を獲得している。
ユーザーからしたら、「えっ、あの会社、外資なの?」と言う人がいるほど、今では日本に馴染んだ存在だ。
リーマンショック後に急変
ところが、その外資系IT企業で、今、「物凄いグローバル化」の波が押し寄せているという。
同社のITセールス部門のマネージャー佐久間健司氏(仮名)が語る。
「これまでは、日本人上司と日本人部下がチームを組んで、顧客が新幹線移動するのを見越して、新大阪に先回りして待ち伏せ。ホームで土下座まがいのことをして、営業攻勢をかける、接待で宴会芸を披露して商談をまとめるなんて、いかにも日本的な営業手法で業績を伸ばしてきました。チーム内の絆も、いわゆる体育会系的で深かった。
ところが、09年のリーマンショック後、そんな社風は180度変わってしまいました。『日本だけに閉じた人材はいらない』と、純日本風人材はバッサバッサと斬られています」
上記、IT企業と同じ事態は、日本に上陸して50年以上の歴史を持つ外資系金融機関も同じだと、同社人事部の幹部の香山雄一氏(仮名)は語る。
「その理由は、アメリカの本社がリーマンショックで大打撃を受けたからです。特にわが社は金融機関なので、経営再建のために、アメリカの税金を借りた経緯もある。そして、その資金は日本支社にも流れたため、アメリカ流の手法で経営改革する必要があるというのが本社の理屈。それで、完全に『日本ローカル仕様』になっていたわが社は、血も涙もない『アメリカ企業』になっちゃいました」
「それは、切れ者の外国人幹部が乗り込んでくることから始まる」
日本ローカル仕様から、完全なアメリカ企業へ180度転換――とは一体、どのような変化なのか?
佐久間氏も香山氏も、「それは、切れ者の外国人幹部が乗り込んでくることから始まる」と口を揃える。
「もちろんこれまでも、エクスパッドと呼ばれる外国人幹部はいました。でも、かつてのエクスパッドは、本社に居場所のない『流され者』みたいな外国人か、日本びいきで日本人の奥さんがいて、並の日本人より日本語がうまいデーブ・スペクターみたいな外国人と相場が決まっていた。
ところが、リーマンショック後、日本支社のグローバル化のために乗り込んできたエクスパッドは、今までの外国人とはまるで違う。要は、カルロス・ゴーンみたいなエース級の切れ者が上陸したのです」(香山氏)
そして、切れ者外国人は、手始めに何をしたのか?
これもまた、佐久間氏と香山氏の証言は共通する。
「まず始めたのが、日本支社の社員を9つのランクで分け、データベース化したこと。ナインブロックといわれるGEと同じ手法を導入し始めた」(佐久間氏)
佐久間氏と香山氏によると、日本ローカル化した外資がグローバル化する時、かならず行われるのが、このような「GEの真似事」だと言う。
一体、それはどのような手法なのか?(以下次号、佐藤留美)