きっかけがないとなかなか敷居が高い
「当店のメイン・ターゲットである30~40代女性の心理として、ずっと入ってみたいと思っているお店でもきっかけがないとなかなか敷居が高いものです。私は複数の友達からも、『一度あなたが働いているカレー屋さんに行ってみたいのだけれど、なかなかチャンスがなくて』と言われています。彼女たちみたいなお客さんは実はたくさんいると思います。彼女たちが『なかなかない』と言う来店のチャンスを与えてみてはどうでしょうか」
一言でチャンスと言われても難しいのですが、彼女はそのあたりも心得ていて、「ワンコインで、当店の代表メニューをセットで食べられるようなお試しメニューがあれば絶対来る」と胸を張ります。新規獲得はハードルが高いという先入観でハナから外していたのですが、より顧客寄りのしかも生の声を踏まえた提案が出されたことで、既存客向けの妙案が浮かばない以上、その方向で具体策を検討してみようということになりました。
彼女の具体案は、ターゲット層の女性はあれこれ食べられてお得感のあるものが大好きとの考えから、「ハーフサイズの野菜カレー+手作りカレーパン+サラダ+ドリンク+デザート」という、500円でとんでもなくゴージャスなメニューでした。私からコスト管理をうるさく言われている店長は、「そこまでは無理」と言いかけたのですが、私がそれを制して「良い発想をもらったのだから、やるなら中途半端じゃダメだ。新規顧客の取り込みが目的なら多くの新しいお客さんに来てもらえるよう、思い切ってその案でいってみようじゃないか!」と決断を下しました。