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信頼関係を逆手にとって

   「担当者の長期固定化」は、不正リスク要因の定番といえる。Cは、1992年にA社に中途入社し、1998年にはすでにB病院の業務に従事。2003年からは、B病院の医療機器を集中管理する部署の担当となった。そして、保守点検・修理などの依頼を一手に引き受ける中で、Cは「自身が(B病院から)信頼を得ていると認識するようになった」という。

   長らく担当すると、取引先の事務処理体制の「穴」にも気づきやすくなる。Cの場合、B病院ではA社によるサービス内容を点検する現場担当者と、請求書を受け取って支払処理をする事務担当者が分かれており、事務担当者はサービス内容を直接チェックしないため、不正請求に気づかれないだろうという悪知恵が働いてしまった。

   長年同じ取引先を担当する中で得られる知識や信頼関係は、営業推進の潤滑油になる一方で、不正の温床ともなってしまう。信頼がもたらすこのような二面性にどう対処するかが、人事管理の難しいところであり、経営者はそのリスクを十分に認識した上で、適度な人事異動を行う必要がある。(甘粕潔)

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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