うつ病、セクハラ、意味不明の新人… これが「会社トラブル」の全貌だ!

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臨床心理士・尾崎健一からひと言
トラブルに対応する上で、「変化の受容」が助けに

   本連載第1回の「『うつ病』休職社員が~」は、私が臨床心理士としてコメントさせて頂くことになった切っ掛けとなったエピソードです。5年も続いた沢山の話題の中には、臨床心理士の立場からはコメントしづらいエピソードもあって苦労しました。

   この5年間に取り上げられたエピソードの数は253にのぼります。多かった話題の上位には、「メンタルヘルス不調への対応」「セクハラ・パワハラなどのハラスメント」「若手社員の行動」が挙げられます。これらについて、この5年間の社会の動きを振り返ってみましょう。

   「新型うつ」が注目を集めるなど「職場のメンタルヘルス」が話題になることも増え、この5年間で急速に職場のメンタルヘルス対策の取り組みが進んできたと実感します。一方、「メンタルヘルス不調で休職中の人のうち、42.3%が休職中や復職後に退職している」という調査結果が先日発表されるなど、依然として、働く人のメンタルヘルス不調が個人と職場に大きな影響を与えているという現状があり、更なる改善が望まれます。

   「ハラスメント」については、近年国からの働きかけが活発になってきました。「パワハラ」では、厚労省の提言が出され、企業の取り組みが始まりました。「セクハラ」では男女雇用均等法の改正指針が出され、異性間だけでなく同性間のセクハラ防止などが加わり強化される予定です。政府主導で取り組みが促されることは、組織とそこで働く人の自浄作用が低下していることの表れではないかと懸念します。

   また、「若手社員の行動」が理解できないという話題が数多く取り上げられました。これは、「最近の若い者は…」という落書きが何千年前の遺跡から発見されたという話もあるくらい昔から言われていることです。私達は自分に経験のない出来事は理解が不足しがちです。自分と違った育ち方をした世代の考え方や行動が違うのは当然ですし、それを理解しづらいと感じるのも自然なことでしょう。

   対応に困難を感じるこれらの「社内トラブル」に、私達が対応していく上で助けになることとして「変化の受容」を挙げたいと思います。メンタルヘルス不調、ハラスメント、若手社員の行動について、「以前はそんなことはなかったのに」と言うだけでは今後も「社内トラブル」は減りません。「何が変わったのか?」に関心を持ち「自分たちはどう変わればよいか?」を考えていきたいものです。

   これまで読んでいただいた皆様、ありがとうございました。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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