ビジネスにおける「引き算」「割り算」とは
社長からすれば、「努力で叩き上げた自分にできたことが、社員に出来ないはずはない」ということなのですが、私も当時はともかくその後の経験を経て、そのような考えは往々にして仕事が出来る経営者ほど陥りやすい過ちではないかと思うようになりました。A社をはじめ多くのできる社長の下で働く社員が口にするのは、「努力できるかどうかだって能力のうち。社長は会社を立派に運営できるような器の人なんだから、僕らとはそもそも能力がちがう」ということ。これは、至極真理であるように思えるのです。
そこで私は数多くのケーススタディから学んだ、仕事のできる経営者だからこそ心掛けるべきことを少しお話ししました。
仕事ができる経営者は、確実にビジネスにおける足し算と掛け算が得意です。足し算は、仕事の拡大に向けて部下を増やして役割を分担させ、社内の協力体制を構築する1+1を2に、あるいは3や4にまで増やして組織をより増加基調でかつ効率的に運営する足し算です。掛け算は、営業力を駆使して外に人脈を広げ、他社とのアライアンスにより自社1社では到底できなかったであろう業務や販路の飛躍的拡大を実現する、まさに掛け算的事業拡大。
拡大志向の足し算や掛け算は企業を成長させていく上では不可欠なものであるのですが、足し算や掛け算だけではどこかで必ず行き詰ってしまうのもまたビジネスなのです。そんな折に必要なことは、調整局面で我慢をしたり、状況に応じて目標ステージを割り引いて考えたりといった、どこかのタイミングで踊り場を設けるような引き算や割り算です。足し算、掛け算で企業を成長させ、さらにその先の発展ステージにまで持ち上げられた経営者方を見るに、引き算や割り算も上手な人ばかりだなと実感することしきりなのです。