新しい万能細胞「STAP細胞」の論文をめぐり、理化学研究所の調査委員会は4月1日(2014年)、小保方晴子研究ユニットリーダーがねつ造に当たる研究不正行為を行ったとする最終報告書を公表した。
これに対し、小保方氏は直ちに「理化学研究所の規程で『研究不正』の対象外となる『悪意のない間違い』であるにもかかわらず、改ざん、ねつ造と決めつけられたことは、とても承服できない」と、激しく反発するコメントを出した。理化学研究所は4月4日、野依良治理事長を本部長とする「研究不正再発防止改革推進本部」を設置。小保方氏は8日、理研に不服申し立てを行った。さらに、会見を9日に開く予定だ。
海外から見れば、日本そのものが信じられるかどうか
この問題は、「広報」の視点で考えると、全く釈然としない。有名な大企業が、研究開発成果を発表したと仮定する。その研究開発成果に重大な誤りがあったことが後に発覚した場合、当該企業のトップは記者会見で「研究者が悪い」と言うだろうか。企業として謝罪し、「原因究明、対策、再発防止策」の3点セットを速やかに発表するべく努力するに違いないし、研究者を擁護するだろう。理化学研究所は年間予算800億円超、研究者・職員約3000人の国の研究機関である。問われているのは、国の研究開発成果の発表体制であり、海外から見れば、日本そのものが信じられるかどうかということである。
ところが、調査委員会がまとめた再発防止対策の論点は次のようになっている。
(1)研究不正や過失の防止に係る規程や運用の改善
(2)若手研究者が最大限に能力を発揮できる体制の整備
(3)研究成果発表時の承認手続きの明確化とガイドラインの策定、運用
(4)複数の研究者、研究グループ等にまたがる研究成果の責任体制の明確化
(5)報道発表における適切な広報体制の構築
4日に立ち上げた本部の名称も「研究不正再発防止改革推進本部」となっている。再発防止対策の大半は、研究不正再発防止に割かれ、対外的な発表責任は隅に追いやられている印象が否めない。