「誰も辞めない組織」は恐ろしい 体育会系採用の光と影

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"病んだ部分"を温存してしまうリスク


   その点、彼ら体育会出身者は、学生の時点ですでに一定の組織人としての薫陶を受けていて、比較的スムーズにムラ社会の一員に染まりやすい。警官に限らず、別に誰かと取っ組み合ったり重い荷物を運んだりしなくてよい職種まで体育会系が好きなのは、こうした事情があるからだ。実際、筆者の経験で言っても、体育会出身者は採用後の評価も非常に安定している人が多い印象がある。


   一方で、それはもろ刃の剣でもある。確かに彼らは組織に馴染み、離職率も抑制されるだろう。でも、彼らに組織を変革することはあまり期待しない方がいい。既存のルールや暗黙の慣習といったものにメスを入れるのは、彼らのもっとも苦手とすることだからだ。


   「今の組織はパーフェクトだから、変えなくてもよい」というのならそれでもいいが、筆者の記憶に残るだけでも、大阪府警は次のような事件が複数起きている組織だ。


   たとえば、

大阪府警巡査長が自殺 上司から罵声、いじめやパワハラ常態化 4人を懲戒処分(産経新聞)

ハンバーガー15個、部下に"罰ゲーム"で大食い強要の巡査部長処分(同)

といった報道もなされている。


   こんな組織が、はたして「変えなくてもよい」などと言い切れるのだろうか。


   というか、むしろ、そうした上意下達カルチャーがこうした事件を引き起こしたのではないのか。筆者は、いまどきこんなことやってる民間企業なんて聞いたことがない。3年で2割辞める新人よりも、どう考えても組織の側が病んでいると思われる。組織人として耐性の強い人材をそこに投入するのは、その"病んだ部分"を治すどころか温存してしまうリスクすらある。

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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