今回、ミシガン大学MBAの人気授業のひとつ、「Negotiation(交渉)」についてご紹介したいと思います。毎学期複数コマの授業が開講されており、選択授業の中で最も累計受講生の数が多い授業です。
思えば広告会社で働いていて、「交渉」には苦しめられてきました。特に多かったのは、プレゼンをして「企画」では高評価を得たものの、「金額」をめぐってすったもんだが起きるケースです。「もう少し予算があればコンテンツの質を高められる」「話題化の費用を確保できる」と思ったことも多々あります。
戦略的に交渉を「設計」する
仕事からプライベートまで、交渉は不可欠。さらに今後はグローバルな交渉のテーブルに着くことも多くなるでしょう。さて、私たちはどんなポイントに気をつけて交渉に臨めばいいのでしょうか?
まずは「相手の立場を考慮して交渉を組み立てる」ことです。授業では、毎回違うクラスメイトとともに「個人経営のガソリンスタンドを大手企業に売る」「戦隊モノのコンテンツを海外のTV局に売る」「ある街にテーマパークをつくるときの諸条件について関係する行政、企業が交渉する」など様々な交渉のシミュレーションを行いました。その際、「ここまでやるか」というくらい準備をして臨むことが要求されました。
(1)論点(Issue)がいくつあるのか整理する
(2)それぞれの論点ついて、自分と交渉相手の利害(Interest)を考える
(3)金額について、自分と相手のZOPA(Zone of Possible Agreement、合意が可能な金額の幅)を確認する
(4)交渉のTimelineを設定する
上記(3)は、(図1)にあるように、Aspiration Price(この金額だったら大成功、というポイント)、Target Price(目標値)、Reservation Price(自分が妥協できる最低価格)、Best Alternative to the Negotiated Agreement(BATNA、交渉が決裂した場合の代替案の価値)を自分、相手それぞれに考え、これの被る部分が「交渉可能な幅」ということになります。
(4)については、交渉時間の中で、「相手との関係構築に必要な時間」「自分の希望を切り出すタイミング」「相手と条件を交渉する時間」「最終的に妥結するか決裂するかを決めるタイミング」を考え、事前にプロットしておくというものです。これについては、実際に、売り手であろうが、買い手であろうが「先に条件を提示したほうより多くの利益を得る確率が高い」というデータがあるようです。