「最近の若者は精神的に弱い」。時代を問わず、上司や先輩が若手の愚痴をこぼすときに口をついて出るセリフだ。いまでも、「ちょっと叱っただけで会社を辞めてしまった」という事例は、インターネット上をにぎわしている。
少しの刺激を与えると、それまでの自分を消し去って周りとの関係を絶ち、最後は自分自身を「初期化」する。何かと話題の「STAP細胞」に「すぐ会社を辞める若者」をなぞらえる風潮も出てきた。
周囲とのコミュニケーションを断ち切ろうとする
就職情報サイト「キャリコネ」2014年3月13日に掲載された記事に、「STAP社員」なる言葉が載っていた。仕事で壁にぶつかるとすぐに仕事を休み、周囲とのコミュニケーションを断ち切ろうとする。入社から1年もたたず退職した3、4人の若手には、こうした共通点が見られたという。まるで、弱いストレスを受けただけで記憶を消去して簡単に初期化するSTAP細胞のよう、というわけだ。
仕事を辞めないまでも、仕事でつまずけばすぐに家に帰って逃避したがる新人。記事に登場する先輩社員は「仕事は仕事でちゃんとやってもらわなければ、会社をクビになっても仕方がないことぐらい理解してほしい」とぼやく。だが、こんな話を口に出せば今度は「パワハラだ」となりかねない。何とも厄介だ。
失敗を繰り返さないために、どうすべきかを考えさせる
「打たれ弱い若手社員」は、4年前の時点でも「取り扱い方」が論じられている。「プレジデント」2010年9月13日号では、原因として、社会人になるまでに人間関係の訓練ができていない、またいわゆる「縦の関係」の経験が不足しているため、上司と部下といった上下関係によるプレッシャーに耐えられない、といった点を挙げている。対処法としては「どの仕事のどの部分がよかったか」をほめ、さらに当たり前のことでもきちんとこなしていればそれもほめることが重要だとしている。一方で叱る際には、人間性を否定するやり方は禁物で、事実を伝えながら「同じ失敗を繰り返さないようにするにはどうしたらいいか」を自分で考えさせることが必要だと書かれている。
精神的に弱い若手社員を皮肉る意味で使われたSTAP細胞は、今や本当に存在したのかどうかが疑われている状態だ。「世紀の発見」と持ち上げられた理化学研究所の小保方晴子氏も、表舞台から姿を消した。まるで「不都合な真実」を記憶から消し、自らを「初期化」しているかのように……というのは言い過ぎだろうか。