「不正の兆候」生かせず被害15億円 「異常行動」はなぜ見逃されたのか

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「監査の前日は、1人夜遅くまで残業」

   社内調査委員会の報告書によれば、発覚の3年くらい前から、事業部門から売掛金の明細に不明な点があると指摘を受け、経理部内でBの経理処理を疑問視する声があったそうだ。なぜそれがうやむやになってしまったのか、残念でならない。

   また、次のような不正の兆候も見過ごさずに、キッチリ対応していればと悔やまれる。

・銀行預金の残高証明書を偽造した際、金額を切り貼りしたため「数字がガタガタになった」とBは供述している。

・同僚によれば「監査の前日は、Bが1人夜遅くまで残業しており、監査室に提出する書類についても直接監査室に提出すると述べて他の経理部員には決して渡さなかった」そうだ。これは、不正を隠そうとする典型的な異常行動だ。

   恐らく「まさか、うちの会社で(自分の部下が)横領なんて」という先入観があったのではないか。「カネに困れば誰でも着服の誘惑に駆られる」「もし、経理担当者が着服するとしたらどうやって隠すだろうか」という懐疑心をもってチェックすることの大切さを改めて痛感する。(甘粕潔)

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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