「監査の前日は、1人夜遅くまで残業」
社内調査委員会の報告書によれば、発覚の3年くらい前から、事業部門から売掛金の明細に不明な点があると指摘を受け、経理部内でBの経理処理を疑問視する声があったそうだ。なぜそれがうやむやになってしまったのか、残念でならない。
また、次のような不正の兆候も見過ごさずに、キッチリ対応していればと悔やまれる。
・銀行預金の残高証明書を偽造した際、金額を切り貼りしたため「数字がガタガタになった」とBは供述している。
・同僚によれば「監査の前日は、Bが1人夜遅くまで残業しており、監査室に提出する書類についても直接監査室に提出すると述べて他の経理部員には決して渡さなかった」そうだ。これは、不正を隠そうとする典型的な異常行動だ。
恐らく「まさか、うちの会社で(自分の部下が)横領なんて」という先入観があったのではないか。「カネに困れば誰でも着服の誘惑に駆られる」「もし、経理担当者が着服するとしたらどうやって隠すだろうか」という懐疑心をもってチェックすることの大切さを改めて痛感する。(甘粕潔)