「サムラゴウチ社労士?」現る 「障害」利用したモラルハザードとは

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   元「全聾(ろう)の作曲家」佐村河内守さんは、騒動後の医療機関診断で「聴覚障害に該当しない」とされ、身体障害者手帳を横浜市に返納した。

   横浜市は、重度障害者医療費助成金として3年間で約24万3000円を支給していたと、会見で明らかにしている。また、本人は会見で障害年金は受け取っていないと説明した。

たいしたうつ症状でもない人をターゲットに

処方される薬の種類も日夜研究…
処方される薬の種類も日夜研究…

   結局、最初から聴力があったのかなかったのかは藪の中だが、一連の佐村河内騒動を受け、世の中には本当は障害者に「該当しない」人が、障害者認定されている人もいるのだという事態があらためて浮き彫りになった。

   そして、良くないことに、そんな不届き者に手を貸す士族がいるらしい。都内で開業するある社会保険労務士(以下社労士)が、こんなことを教えてくれた。

   「鬱(うつ)病患者の急増を背景に、たいしたうつ症状でもない人をターゲットとして、『障害年金2級』受給資格を得ることができるよう手続きし、手数料としてその10~15%を要求する社会保険労務士が物凄い数で増えているんです」

   もちろん、障害年金を本来受け取るべき深刻な病気の人を手助けするのは、社労士の重要な仕事の一つだろう。

   しかし、「不正の手助け」と言われても仕方がない実態があれば話は別だ。前出社労士によると、

「本来なら認定を受けられない程度のうつ症状の人に障害年金を取得させて、相談者はサッカー観戦三昧、自分は金儲けという社労士がいる。また、症状が軽くても(ごまかして)障害年金を受け取ることができる、とする方法をディスクに焼いた情報商材を売って荒稼ぎしている社労士も存在する」

というから世も末だ。

精神科医「ニセうつ病患者が増えた」

   実際、私もある精神科医から「最近明らかに社労士が糸を引いたとみられる、障害年金受給目当てのニセうつ病患者が増えた」という話を聞いたことがある。

「この体たらくでは、本来、障害年金を貰うべき人に不都合が生じますよね」

と、その精神科医は嘆いていた。

   さらに、都内近郊で開業する若手社労士に聞いたところ、「ついに、『サムラゴウチ社労士』が現れた」のだと言う。どういうことか。

「相談者(クライアント)の障害年金申請を手伝っているうちに、自分も欲しいと欲目を出したのでしょう。クライアントもかなりいて精力的に働き、ブログの更新は毎日、趣味活動も盛んというおよそうつ病とは思えないその社労士自身が、うつ病で障害者手帳や障害年金をもらっちゃっているのです。なぜ、そんなことが出来るかって? なにせ、彼らは日頃からどんな薬を処方されると障害の認定をもらいやすいかなど日夜研究していますからね」(前出若手社労士)

   念のための確認だが、障害年金について言えば、佐村河内さんは「一切受け取っていない」としている。

明らかなモラルハザード

   社会保険労務士は、その資格を取得するには平均700時間はみっちり勉強しなければいけないといわれる難関国家資格だ。 企業をつかさどる「ヒト・モノ・カネ」のうち、最も尊い「ヒト」の専門家である社会性、公共性の高い仕事でもあり、本来正義を追求しなければいけない立場の人間のはずだ。

   もちろん、今回の取材で指摘された「不届き者」に手を貸したり、自ら不正受給(?)したりしている人は、ごく一部かもしれない。 それでもここまで来ると、難関資格を取っても活躍できない「飛べないスーパーマン」どころの騒ぎではない。明らかなモラルハザードだ。(佐藤留美)

佐藤 留美(さとう・るみ)
ライター。企画編集事務所「ブックシェルフ」(2005年設立)代表。1973年東京生まれ。青山学院大学文学部教育学科卒。出版社、人材関連会社勤務を経て、現職。著書に、『資格を取ると貧乏になります』(新潮新書)、『人事が拾う履歴書、聞く面接』(扶桑社)、『凄母』(東洋経済新報社)、『なぜ、勉強しても出世できないのか?』(ソフトバンク新書)、『結婚難民』(小学館101新書)などがある。
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