世間では博士論文の「コピペ疑惑」で騒がしいが、もちろん独自の研究で論文を書き上げ、博士号を手にした人が大多数だろう。ところが、苦労して学位を手にしても、就職先がなかなか見つからないというのだ。
大学や研究機関に勤めたくても、そこは狭き門。一般企業は、博士の採用にあまり積極的ではないそうだ。実態は好転するだろうか。
国の見通し甘く博士号取得者の採用枠広がらず
文部科学省が発表している最新の2012年度版「学校基本調査」では、博士課程修了者の就職状況に触れている。このうち正規の就職者は52.5%にとどまっている。修士課程修了者の70.1%と比べると、差は大きい。また正規の職員でない者は14.8%、一時的な仕事が5.3%となり、2割ほどが仕事は見つかっても不安定な状態に置かれていることがわかる。進学も就職もしていない割合は18.5%に達する。2割弱が博士号をとりながら「無職」を余儀なくされている。
2013年8月8日付の朝日新聞によると、博士課程に進む学生は20年間で2.5倍増えた。国が1991年度以降、研究や産業技術の高度化に伴って研究者の需要が企業や研究機関で増えると予測し、「10年間で2倍程度」と目標を掲げたからだ。だが実態は、進学者は増えた半面、博士号取得者の採用枠は思ったほど広がらなかった。
研究を続けてきた学生にとっては、大学で研究職を得るのが望ましいが、なかなか「空き」が出ない。博士課程修了後に任期が限られた研究職に就く「ポストドクター(ポスドク)」という手はあるが、待遇は決して恵まれているとは言えない。朝日新聞の記事では、31歳女性のポスドクの例が紹介されていた。首都圏の大学3校で講義を受け持つが、正規の教員でないため研究室は使えない。月収は9万円で、契約はどこも1年と厳しい状況だ。
研究機関の場合も、正規研究員となるのは難しい。STAP細胞の論文がずさんだったとして批判を浴びている理化学研究所の場合も、研究者には任期があるという。14年3月14日放送の「報道ステーション」(テレビ朝日系)では、理研OBのコメントが引用された。今回、画像や記述の使用に不適切な部分があると疑いがもたれている小保方晴子氏のポジション「ユニットリーダー」の場合、契約期間は5年間。その間に目立った成果を出さないと「次はない」、つまり任期満了で「戦力外通告」の憂き目にあうというわけだ。