速やかに回覧されず、メール返信も滞る
筆者が実際に経験した例を述べる。この上場会社では、広報がまとめたニュースリリースを役員に回覧して承認印をもらうのと並行して、各役員にメールでニュースリリースを送り、メールで承認の返信をしてもらうという体制をとっていた。ところが、回覧すべきニュースリリースは速やかに回覧されず、メールで送ったニュースリリースについても返信されないケースが非常に多くなっていた。適時開示の場合や、記者クラブに資料配布日時を伝えた場合は、内部承認がなされなくても発表しなければならない。
この会社では、広報は社長直轄となっていたので、せめて社長の承認をもらうようにしていたが、社長が多忙なときは承認が間に合わない時もあった。役員の承認なしで広報が発表したことになれば、あとで問題となるため、事後に役員の承認印をもらって内部統制の体裁を整えていた。
また、筆者が良く知る上場会社の広報責任者は昨年、広報を追われ、降格の憂き目に遭った。理由は「株価を上げられなかったから」だそうだ。これは全くおかしい。株価は経営の結果であり、株価が下がったのは株式市場が経営力を認めなかったからである。広報は、社会から正しく理解していただくための窓口に過ぎない。自らの経営力を棚に上げ、広報に責任を転嫁する社長がいることに驚いた。