「STAP細胞」理研にみる「問題起きると責任転嫁」 広報リリース承認体制の重要性とは

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   新しい万能細胞「STAP細胞」の論文をめぐり、理化学研究所が3月14日(2014年)、画像の二重使用や、他人の論文のコピーなど不適切な点があったと認めた。記者会見で野依良治理事長は、STAP細胞の真偽について「具体的な根拠を示せず、証明できない」と説明した。

   これにより、英科学誌ネイチャーに掲載された論文も、撤回の方向で関係者間の協議が進められている。これに対し、大々的にSTAP細胞を報道したメディアは「私たちは、発表段階で論文の問題点を見抜けなかった。引き続き取材を重ね、検証していく」(朝日新聞の桑山朗人科学医療部長)と反省の弁を連ねた。

メディア対応で重要なのは「逃げない、隠さない、ウソつかない」

   朝日新聞の桑山部長が「英科学誌ネイチャーは専門家による厳しい査読で知られ、掲載率は1割以下。論文に名を連ねている研究者の過去の実績も踏まえ、この論文は信頼できると判断した」と語っているように、メディア側が問題点を見抜けなかったのは無理もない。問題はあくまで、メディアをミスリードした形の理化学研究所にある。これまで本コーナーでは、メディア対応で重要なのは「逃げない、隠さない、ウソつかない」ことであり、メディアをミスリードしてはいけないと強調してきた。そこで、あらためて今回のケースを一般企業に当てはめて教訓としたい。

   一般企業の場合、メディアに発表する際には、取締役会決定事項を広報がニュースリリースにまとめ、広報担当役員の了承を得て発表する適時開示ケースがある。これ以外に、ニュース発信元の研究開発部門や営業部門から情報を得て広報がニュースリリースにまとめ、発信元の担当役員、広報担当役員の了承を得て発表するケースもある。ところが、大企業ならいざしらず、中堅・中小企業の場合は株式上場会社であっても、広報担当部署すら存在しない企業が多く、内部統制、情報統制のルールを定めていても、形骸化しているとの話をよく耳にする。

管野 吉信(かんの・よしのぶ)
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員などを務める。東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)の広報室長を経て、2012年に「中堅・中小企業の隠れたニュースを世に出す」を理念に、株式会社広報ブレーンを設立。
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