臨床心理士 尾崎健一の視点
まずは上司として支援する姿勢を見せる
本件だけで、一律に私用電話を禁止するのは問題の解決になりません。古き良き時代であれば、課長がAさんの相談にのって、家庭問題に対して会社として出来る範囲の協力や情報提供をして問題解決していた類のものでしょう。それが今では、上司が部下のプライベートな問題を共有したり、そこに介入したりすることは著しく減少しています。本ケースで、まず上司が取るべき行動は、上司が支援する姿勢を見せて、「話を聞かせてくれ。困ったことがあったら力になる」と言ってみることです。
それでも、会社の上司には話せない内容もあります。無理に聞き出して、こじらせるより「本人から言える状態」になるまで待つことも相手を大切にする意思表示です。そんな時は、仕事の上司としてすべきことに焦点を当てます。個人的事情は深追いせず、仕事の生産性が低下している問題に注目しましょう。「業務が滞っている」「必要な時にいない」などの仕事上の具体的問題があることを合意し、改善のために何をすべきかを話し合うことです。そんな話し合いと仕事の支援を続けるうちに個人的事情を話してくれることもあります。周りも生産性が回復すれば文句はないはずです。