「そんな急に言われても困ります!何を言い出すのですか」
とお笑いで相方や他人に対して打ち合わせなしにボケるよう振ること、あるいは不可能と思われる事柄をするように振ることを無茶振りと言います。TVで芸人たちが「どうにかしてそれをやろう」と悪戦苦闘する様を見て、笑ったことが誰でもあるのではないでしょうか?
そんな無茶振りはお笑いの世界だけでなく、ビジネスの世界でも頻繁に行われています。例えば、やったことがない会議の司会を突然に「君にやって欲しい」と指名する上司と戸惑う部下。あるいは「明日から入社してくる後輩の面倒をよろしくお願いしたい」と急に育成担当を任されて驚く中堅社員。そんな無茶ぶりに関して「無理難題の押し付けに過ぎない」「責任転嫁ではないか」とネガティブな意見を持つ人もたくさんいます。
振られた人も得する可能性が大
でも、当方は無茶ぶりを巧みに駆使することで仕事の幅が広がる、振られた人も得する可能性が大…と確信しています。特にキャリアを積むと、仕事がドンドンと振られてくるようになります。それを如何にさばいていくか?そのときに、大事なことは「どの仕事を自分がすべきか?」仕分けを行い、それ以外の仕事を誰かに任せる…ではなく、無茶振り出来る能力を持つことが重要と考えます。ちなみに、自分が無茶振りすることに長けていると気付かせてくれるきっかけとなる出来事がありました。それは
「あなたは無茶ぶりが上手。だから、それを著作にするべきです」
このように指摘してくれたのは友人である祐川京子さんの一言。『ほめ言葉ハンドブック』で累計20万部のベストセラー共著者。そんな祐川さん曰く、当方はあちこちで巧みに仕事を無茶ぶりしてきたらしい。その手法は(無意識かもしれないが)仕事の様々な局面で大いに活かされている。是非とも、書籍にして伝えるべき…と断言された。この指摘があるまで、自分の『無茶ぶり』に気づいていなかった。ただ、改めて振り返ると
・前フリなしで会議の仕切り
・突然のご指名で責任者に抜擢
・期限の迫った商品企画
新たな発見もあり、いい機会に
心の準備も出来ていないままで、おまけに断る選択がなさそうな「無茶ぶり」をされた知人、友人、職場の同僚がいたのかもしれない。気になって、周辺調査をしてみると
「そうです。無茶ぶりをされました」
と断言する人々が続々と現れた。では、振られた「その後」はどうなったのか?続いて、聞いてみた。すると、想定以上に前向きな回答が返ってきた。決して、古傷を掘り返すような質問だからと、適当にごまかされたわけではない(と、自分的には思いたい)。リクルート時代に、大掛かりなプロジェクトをいきなり無茶ぶりした元部下は、
「無理かもと思いながらも、決断したので逃げずに最後までやり遂げることが出来ました。今となっては、新たな発見もあった、いい機会だったと思っています」
とのこと。改めて、無茶ぶりは有意義であると確信。みなさんも無茶振りを仕事の重要な手法と考えて、技を極めてみませんか?(高城幸司)