前々回のコラムで取り上げた酒造メーカーにおける不祥事について、同社から調査結果を踏まえた再発防止策が公表された。
人材の確保・育成を中心とした製造技術の向上、仕込み工程の簡素化と設備の拡充、無理のない生産計画の策定、組織内のコミュニケーション向上、チェック体制強化など、人・設備・就業環境・管理の各分野にわたって対策が立てられているという点では評価できる。
できるだけ具体的に取り決めたほうがよい
しかし、問われるのはそれぞれの対策の実効性である。絵に描いた餅に終わらないよう、以下のような点に留意して地道に取り組む必要があるだろう。
まず、再発防止策に使われがちな「あいまいな表現」が対策を形骸化させてしまわないように気をつけたい。酒造メーカーの対策では、次のような表現が気に掛かる。
「規格米と規格外米の区分管理については、日々、副工場長ならびに工場長が確認を行い、適宜、社長も確認します」
どのような場合に社長が確認するのかをあいまいにしたままだと、副工場長や工場長が「こんなことで社長の手を煩わせないほうがいい」などと気を遣い、問題がトップに伝わらないリスクが高まる。「工場長が問題ありと判断した場合は即日社長に報告し、対応を協議する」「社長は、確認状況を四半期ごとに抜き打ちチェックする」など、できるだけ具体的に取り決めたほうがよい。
「問題点ならびに異常値が認められた場合は、副工場長および工場長に速やかに報告します」
「速やかに」という表現も、いつまでなのかがあいまいになりがちだ。報告者のミスで問題が発生した場合や副工場長や工場長が出張や休暇で不在の場合などは、報告がズルズルと先送りされる恐れがある。報告者に迷う余地を与えないよう「異常値が認められた場合は即刻、遅くとも当日中に副工場長に報告する。副工場長が当日不在の場合には工場長に、両者不在の場合にはいずれかの緊急連絡用携帯電話に連絡する」などと極力具体的にルールを明文化しておきたい。
「徹底的」「適切」などの表現も同様だ。簡潔で響きはいいが、何をどのように「徹底」するのか、何をもって「適切」な対応と考えるのかなどがあいまいになり、現場の判断や行動にブレが生じやすくなる。