高いランクの会社に入ることがゴールになってしまっている
更に良くないのは、就職活動が始まった時に大きな差がついていることを学生が自覚していないということでしょう。有名大学の理系で英語が喋れて学生うちに仕事をかじっていた人と、2流大学卒の文系で学生時代にこれといった実績のない人がいたとして、後者も勘違いして、就活レースに参画して、有名企業を100社うけては撃沈します。3流大学のひとのなかには、正社員になれるならブラック企業でもしかたないと追い詰められてしまっている人も少なくありません。そしてFランク大学の学生は、就業意識ですら希薄になってしまっている人も多くいます。
もちろんこれは、日本の雇用の仕組みに問題があるのも確かです。安定した上場企業と中小企業では、雇用の安定や生涯賃金に大きな差があるのは事実です。そして就職時点でそれが固定化されてしまっているのですから。
ただ、私がここでいいたいのは、就職活動というのが、
・知名度
・安定
・高賃金
の3本柱の「会社」を探して、そこに潜り込むための活動になってしまっているということです。あくまで主体は「会社」の良し悪し、そこに入れるのか、そこに入って活躍できるか、そこにいて楽しいかという視点がすっぽりぬけて、高いランクの会社に入ることがゴールになってしまっています。
これは、転職でも事実上一緒です。新卒の時に入れなかったランクの高い会社に転職するということが、キャリア・デベロップメントだと考えているひとも少なからずいるのです。
本当の、キャリア・デベロップメントというのは、自分が活躍できる場所を探すことです。世の中にはいろいろな仕事や、役割があります。そのなかで、自分が求められ、活躍できる場所を探して、自分が輝く職業人生をおくれるようにする。
そのために、広い視点と、自分ならではの職業の武器を磨いていく、それが本当のキャリア・デベロップメントです。
格の高い企業で働くことがゴールなのではなく、仕事を通して成果を残していくことが最も大事な視点なのです。為末さんの例で言えば、100m走に挑戦することがゴールなのではなく、為末さんの生まれ持ったアスリートとしての能力をもっとも発揮できて成果を残せる競技を探し、そこで能力を開花させて、結果をだす。
まさに為末さんはキャリア・デベロップメントをされたのだと思います。