出向銀行マンを襲った「トンデモない濡れ衣」 社長の説明不足が悲劇を生む

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危険な「幹部社員なら分かって当然」

   Uさんに対する批判は、自分に社長から与えられたミッションが他の取締役にしっかりと理解されていないから起きている、それはそもそも社長の説明不足が原因なんじゃないのか、という結論に至り、悩みに悩んだ末に思い切って社長に直訴することにしました。

   すると社長は、「私は生え抜きの三取締役には事前に『銀行から企画・総務担当の人材を受け入れることにしたので、よろしく頼む』と言ってあるのだから、君の立場や役割を理解できていないはずがない」と、当初はその程度の説明しかしていなかったにもかかわらず全く意に介さなかったそうです。

   Uさんに対する生え抜き取締役からのきつい風当たりは、結局「みんな私がなぜ銀行から人を受け入れたのか、彼の役割も含め当然分かっているハズだ」との思い込みで十分な説明をしなかったことが原因だったのです。社長はどこまでいっても社長ですが、取締役といえども社員は社員、所詮はサラリーマンです。社員として自分のポジションを気にする立場である以上、社長から明確なミッションの説明がないなら、同列の新たな取締役登場はライバル出現であり、自分との比較対象的な見方になるのは当然なのです。

「僕は生え抜きの人たちのポジションを脅かそうなんてこれっぽっちも思っていないし、ましてや技術の専門知識もない僕が次期社長の座を狙うなんてあり得ないですよ。本当にひどい濡れ衣だったわけです」

   結局社長はUさんの必死の直訴を受けて事態を理解し、社長を含めた全役員が酒を酌み交わしながら腹を割って話をする役員懇親会を毎月開催することになりました。それからは徐々に誤解も解けて三取締役もUさんのミッションを理解し、今ではすっかり好意的な姿勢に変わり、当初の誤解は笑い話になるところまできたそうです。

   このような人事問題に限らず、「全部は言わなくとも、自分の考えは分かっているはず。ましてや幹部社員なら分かって当然」という考えの下に、社長が十分な説明をはしょって物事をすすめることはありがちなのですが、これは非常に危険です。求心力の低下、社内の不協和音を感じたら、先導役である社長の説明不足を疑ってください。社長の説明不十分な言動に対する周囲それぞれの勝手な理解の錯綜は、最終的に人材の流出など取り返しのつかない事態も招きかねないのです。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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