「採用有料化の廃止」は誰も幸せにしない ドワンゴは厚労省と闘ってはどうか

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学生・企業双方の負担を減らすための工夫なのに


   そもそも、筆者には「有料化で学生の就活が制約される」というロジックがさっぱり理解できない。というのも、むしろ有料化というのは学生・企業双方の負担を減らすための工夫だからだ。


   せっかくなので、前回登場してもらったキャラクターに引き続き登場願うとしよう。まず東大の山本君だが、彼はドワンゴのエントリーが無料になったら喜んでクリック一つでお手軽エントリーするだろう。動機は「とりあえず有名で人気企業だから」。事業内容とかキャリアの中身までは良く分かっていないが、そんなことは大した問題ではない。彼には高いポテンシャルがあり、どんな仕事でも必ず高い成果を上げられるはずだからだ(と自分では思っている)。


   一方、無名大学の学生でニコ動を愛してやまない鈴木君は、まあ手数料がゼロになったことは悪い話ではないけれども、強力なライバルが激増する分、彼が同社の内定をもらえる確率は格段に低くなるのは確実だ。というわけで、一社に絞るわけにもいかないから、彼自身も保険として数多くの会社に無差別エントリーせざるをえないだろう。他社の選考を受けるための交通費や手間などを換算すれば、2525円どころじゃない持ち出しになるはずだ。


   そして、当のドワンゴ採用チームだが、きっとエントリーの山を前に来年の今ごろはへとへとに疲れきっていることだろう。東大とか早慶上智とか、学歴だけは一流だが志望動機や本気度がいまいち分からないポテンシャルエリート相手に、泥沼の採用活動を展開しているはずだ。


   なんていうと「学歴なんか見ずに面接で熱意を見抜け」という批判も来そうだが、頭の良い人というのは往々にして要領もいいので、面接するとそれっぽく見えるものである。有料化でさくっと本気度がチェック出来たものを、ゼロから人海戦術で確認させられる採用担当には同情する。

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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