高学歴の女性が高給の職を捨て、主婦として楽しみながら家を守る――そんな流れがアメリカで出始めているそうだ。「女性の社会進出」に逆行する動きのようにもみえるが、米国人の目にはどう映っているのだろうか。また、こうした「波」は、日本へも押し寄せてくるのか。
「キャリア追求から主婦へ」というライフスタイルに転じた多くの女性を描いた『Homeward Bound』が、米国で2013年に刊行され、主要メディアで大きく取り上げられた。日本では14年2月、翻訳版『ハウスワイフ2.0』(文藝春秋)が発売された。
「女性の伝統的な生き方」に賛否
著者のエミリー・マッチャー氏はハーバード大卒で、自らも高学歴だ。地元の南部ノースカロライナ州に戻り大学に勤務したが、離職。現在は、夫と「田舎暮らし」を楽しむ、新しい主婦「ハウスワイフ2.0」だ。フリーライターとしてワシントンポストを始め新聞や雑誌に執筆してもいる。
自分と同じくエリート校を卒業後、投資銀行や広告代理店といった高い収入を得られる職に就きながらそれを捨て、都会を離れてジャムを作ったり編み物をしたりという「古き良き生活」を楽しむ女性が増えていることに興味を持ち、1冊の本にまとめた。
著書は反響を呼び、多くの主要紙や女性誌に書評が寄せられた。米3大ネットワークABCやNBCの番組に自ら出演して、彼女がテーマとした「新たな主婦像」を語った。ABCはブログに関連記事を掲載、こうしたトレンドが生まれたのは不況が一因であるとの見方を披露している。
マッチャー氏の著書を紹介したABCブログの記事には、さまざまな意見が寄せられた。ひとつの傾向は、「家でのんびり暮らすなんて無理」との見方だ。看護師を名乗る人物は、週40時間働いたうえ家では家事に追われるという。外では目いっぱい仕事して、家に帰れば家族に尽くし一緒に時間を過ごすのが「私の現実」と説明する。ほかにも、「素晴らしい主婦」になる「秘訣」は大金持ちと結婚することだろうと皮肉を浴びせる書き込みもあった。
どうなる今後の日本
もちろん、マッチャー氏が描いた主婦像への賛同者も少なくない。「(著書では)キャリアウーマンたちがどのようにして家に入る生活を選び、裁縫や編み物といった昔ながらの家事をするようになったかが示されている」と興味を持った読者や、「主婦ほど重要な仕事は存在しない。ウチの子どもたちはもっと親と一緒にいる時間が必要だった。お金があれば便利だけど、それがすべてじゃない」との主張もあった。
女性にとって「伝統的な生き方」への回帰は、「企業でのキャリア重視」という発想からの転換を迫る「新しい生き方」への「進化」でもあり、米国では徐々にトレンドとなっている点を同書は指摘している。日本でも今後、同じような動きが起こるのだろうか。