公立校の中にも私学に劣らない進学校を
そうなる理由は簡単で、本人と相性の良い事業部に配属されるか、上司や同僚に恵まれるか、そして何よりも、評価されやすい環境にあるかといった諸々の要素で、本人のモチベーションが大きく左右されるためだ。たとえば採用時の評価が高く、若手が多く在籍する競争の激しい重要部門に配属された結果、(査定成績なんて多くの企業では相対評価の奪い合いなので)伸び悩む若手は珍しくない。労働市場の流動性が高ければその過程で転職するのだろうが、日本企業の場合はそのまま腐ることが多い。
逆に20代が一人しかいない斜陽部門に配属された結果、コンスタントに高い評価を独占し続け、気がつけば本当に部門を支えて立つ人材に育っていたなんてケースはどこの会社にもある。キャリアにせよ教育にせよ、小さな成功体験の積み重ねが大きく影響するというのが筆者の見方だ。
とすると、実は庶民にとっては、地方の方が教育環境は良好なのかもしれない。筆者は小学校から大学まで一度も私立に通うことなく(まあ今のところは)まっとうな社会人になれたが、これが都内だったら中学あたりでぐれていた可能性もないではない。まあ暴走族なんてめんどくさいことはやらなかったろうが、"お受験"というステージで不戦敗した経験は、何らかのネガティブな心象を与え続けたはずだ。
そうした問題への処方箋は実にシンプルで、テスト結果の公表や学区制の緩和により公立校同士をもっと競争させて、公立校の中にも私学に劣らない進学校を作るしかない。
学校の序列化や教育の形骸化を危惧する意見もわからないではない。でも、富裕層の子供が私学経由で一流大に進学し、そうでない家庭は早々に競争からリタイアする現状よりはよっぽど健全だろうというのが、地方の公立校出身で、多くの幹部候補エリートが組織内で腐るのを見てきた筆者の意見である。(城繁幸)