東京五輪組織委員会会長である森元首相の発言が問題になっています。
彼は「勝てる可能性が低い種目に浅田真央選手を参加させたこと」に対して、戦略ミスではなかったかと指摘したかったようです。
しかし、私はこの会見の全文を読んで、やっぱり失言だったと感じました。組織委員会会長として、は勿論、「海外の人とも一緒に働く」という立場にある人としても、実に不適切です。
リスペクトが感じられない
オリンピックというのは、スポーツの祭典であり、あくまでも選手が主役であるものです。五輪組織委員会会長というのは、その選手が最高のパフォーマンスを上げるために尽力しなければいけない人です。
同時に、政治に関係なく、スポーツによって世界がひとつになるという目的もあり、あくまでも人類が平等であることを伝えなくてはならない立場でもあるはずです。
このような人が、正当な選考を経て選ばれた自国の選手を「オリンピックに出るだけの力量ではなかった」と言ってはいけません。
その他、パラリンピックに行くことについて「また20何時間以上もかけて行くのかな、と思うとほんとに暗いですね」と、「めんどくさい」ともとれるような発言をしたり、選手を「あの子、大事なときには必ず転ぶんですよね」とあの子呼ばわりしたりと、選手やオリンピック・パラリンピックにリスペクトが感じられません。
反面教師として、多くの人の学びのきっかけになってくれたら
このようなタイプの人は、海外の日系企業で現地人従業員に嫌われる駐在員の典型です。
現地人スタッフや現地文化にリスペクトがなく、平気で失礼なことを言ってしまう。
政治的な正しさを無視して、自分で感じたことをそのままぶっちゃけトークしてしまう。
日本国内の居酒屋で、まわりのおっさん達と話をしている分には問題ないのですが、それを立場、文化が違う人達の前で普通にやってしまうことで、不信や軽蔑を招き、社内で孤立し、仕事がうまく回らなくなるのです。
海外で働く場合、一番いいのは、現地のスタッフや文化を理解し、そのいいところ、悪いところを理解し、敬意を持って接することです。それが出来ないまでも、最低限しなくてはならないことは、現地の人の前で失礼にあたることをしないということです。どんなことを言ってはいけないのか、どんな行動をしてはいけないのかということをキチンと学んでおく必要があるわけです。
日本国内の日本企業で、同じようなことを考えている人の中だけで過ごしていると、違う文化の人への接し方というのはなかなか学べません。そこで、意識して学ばないと、いざ自分が海外に行ったときに苦労をすることになります。
森会長の発言は、その反面教師として、実に典型的な物だと思いますので、多くの人の学びのきっかけになってくれたらなと思います。(森山たつを)