MBA受講のため残業できません 二代目社長「そんな奴評価できないでしょ」

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   前回に続き、コンサルティング業界で活躍する上級幹部が指摘する、今どきMBAを取得しようとする人にありがちなパターンの二つ目は、自分の卒業大学名に自信の持てない人が、社会人大学院なら入りやすいだろうと、"学歴ロンダリング"するケースだそうだ。

   あるガラパゴスMBAの卒業生で、現在は地方で親の事業を継いでいる二代目社長が言う。

「私もそのクチでしたが、ガラパゴスMBAは、青学とか立教とか明治とかBランク校、あるいは日東駒専のCランク校出身者が多かったですね。勤め先は、メーカー系と、IT系、大手だけど人材派遣会社とか、ビミョウな人が多かった気がします。みんな、SEからコンサルに上がりたいとか、工場のラインでの生産管理から経営部署のほうに上がりたいとか狙っているわけです。それで、卒業後はどうなったかって? 経営部門に異動できたなんて話は、聞いたことがありませんね。だって上からすれば、MBAの授業のために定時で帰っちゃうような奴は評価できないでしょ」

「活かせる組織では、既にMBAは採り終えたという印象」

「置かれた場所で咲く人材」とは…
「置かれた場所で咲く人材」とは…

   それで、肝心のこの彼はどうなったかというと、元々、家業を継いでいたし、出身大学名が低かったコンプレックスを埋めたかったという目的だけで通ったため、最終学歴を綺麗に"お化粧"できただけで満足だと言う。

「ま、そのために、学費に300万円近く取られたのは痛手でしたが、それも親が払うので、ね」

   「ガラパゴスMBA」を含めMBAの学歴をテコに、転職してキャリアアップしたいと考える人は、今も少なくない。だが、前出、コンサルティング会社の幹部氏は、「今更、MBAは転職の武器にはならない」とみている。

「コンサル会社や優良ベンチャーの幹部職などMBAで学んだことが活かせる組織では、既にMBAは採り終えたという印象です。MBAはもはや希少価値ではないため、MBAを取ったから即、外資コンサルや外資金融に、将来性の高いベンチャーに入れるというものではありません」

   筆者は、2000年代前半までは、「MBAなら誰でも入れる」と評判だった大手日系IT会社を知っている。

   だが、そんなMBA大好き人間が社長の会社でさえ、最近はMBAを採用しない傾向だと、同社社員から聞いたことがある。

「昔、大量に採用したMBAホルダーが、使い物にならなかったからです。また、最近はグローバル展開を加速しているため、いわゆるクロスボーダー取引と言われる海外企業との直接M&Aや投資実務を経験した人を欲しがる傾向が強いですね。MBAはこういうことを机上では習うみたいですが、多くの場合、実務が出来るわけではないから、候補者にさえならないそうです」
佐藤 留美(さとう・るみ)
ライター。企画編集事務所「ブックシェルフ」(2005年設立)代表。1973年東京生まれ。青山学院大学文学部教育学科卒。出版社、人材関連会社勤務を経て、現職。著書に、『資格を取ると貧乏になります』(新潮新書)、『人事が拾う履歴書、聞く面接』(扶桑社)、『凄母』(東洋経済新報社)、『なぜ、勉強しても出世できないのか?』(ソフトバンク新書)、『結婚難民』(小学館101新書)などがある。
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