甘~い海外投資話にノリノリの社長 その気にさせたスゴ腕テクニックとは

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なぜか前向きでアグレッシブな社長ほど…

   しかし結果は、海外投資物件で損失を繰り返し失敗に終わります。加えて、失敗以前から判然としない海外投資により資産実態が見えにくくなったことで取引銀行が軒並み及び腰になっていたところに、投資の失敗により国内の資金繰りも悪化。銀行団がそっぽを向いたことで、高利の怪しいファイナンスに手を出すに至ります。それを知った銀行は一斉に融資を引き上げはじめ、遂には資金繰りが破綻。まさに投資をきっかけとした悪循環の中で、会社更生法適用の憂き目にあったのです。

   B社社長は投資失敗時も、「たまたまタイミングが悪かっただけ。本当はうまくいく話だった。ツキがなかったということに尽きる」と、投資顧問の海外投資指南やそれに従った自分の判断ミスを一切認めようとしませんでした。しかし破綻後に分かったことは、紹介の会計士も投資顧問会社から多額の紹介手数料をとっており、単に彼らの食い物にされていたということ。現地に連れて行き、それらしい投資仲間と引き合わせ安心感を醸成したり、現地の超高級ホテルで接待を繰り返し先々のイメージを演出したり、後から聞いた催眠術にも似た詐欺まがいの手数料稼ぎの巧妙さには、驚くばかりでした。

   前向きで景気が上向き加減になると、経営者に持ち込まれる投資話は急激に増えてきます。そのすべてが怪しいものであると申し上げるつもりはありませんが、なぜか前向きでアグレッシブな社長ほど、まともなリスク検証もせずにこの手の話をバラ色なものと捉えがちなようです。実は景気が上向いてきた時ほど、本業でコツコツと積み上げることが大切です。ビジネスには一足飛びはないと考えた方が、最終的な目標にたどり着き足元を救われない確率は高いからです。

   私の話を聞いたS社長、「とりあえず、メインバンクに相談してみる」とその場を後にしました。おそらく銀行は、この話にストップをかけるでしょう。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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