教育の場としての職場と独立支援
確かに仕事というものは業界ごとに全く違います。それとも関係して、働いている人たちの特性もかなり異なります。私も番組放映の翌日以降ネット上で盛り上がっていた "居酒屋甲子園ブラック批判"に「なるほど確かに」と思ったりもしたのですが、N社長の話を聞いて番組の視点は、N社長自身が体感してきたような居酒屋という職場の特性を考慮していない特定の価値観にとらわれすぎているような気がしました。それを踏まえて、次のようなアドバイスをさせてもらいました。
「大切なことは、まず何より法令違反が起きないように気をつけることです。これは社長の意識や言葉上の指示だけではなく、管理者、特に権限のある店長クラスが無理な勤務体制をスタッフに強要していないか否か、そこを十分管理することが大切。辞めたスタッフによるネット上の書き込みは、ほとんどがそのたぐいですから。その上で、マスコミやネット上の業界批判はあまり気にせず、信念を持って突き進むことです。あとはいかにその信念を見える形にしていくかですね」
社長は私の話を聞いて、実は店長の一人をのれん分けで独立させる考えがあり、近々実現したいという考えを話してくれました。教育の場としての職場を経てスタッフの独立を支援し実現させる、これはまさに目に見える形として社長の信念を表現する最高のやり方です。
「特定の立場に立った常識だけでブラックだなんだと言って欲しくないし、先入観で夢を持ってがんばっている連中の邪魔をして欲しくないな」と話すD社長に、本当にブラックとは無縁な経営者であると確信させられました。N社長の居酒屋チェーンのスタッフ定着率は、のれん分けを機に上がっていくのではないかと思います。(大関暁夫)