背景に「大きな産業構造の変化」
同じ調査では、こうした能力を持つ40、50代の採用を「検討したい」と答えている人事担当者は73%。まさにミドル層の採用に追い風が吹き始めているのだ。
「こうした『銀たま採用』に企業が着目し始めている理由は、大きな産業構造の変化があると考えます」(黒田さん)
産業別の就業者数の推移(総務省調べ)を見ると、長年日本を支え続けた製造業の就業者数が、1990年代半ばでサービス業に抜かれている。その後の調査でも、その差は開く一方だ。
こうした傾向を受けてか、企業に属していながら仕事がない「社内失業者」は、製造業を中心に465万人もいるという(内閣府・日本経済2011-2012)。かたやサービス業やIT業界などでは、慢性的な人手不足が問題視されており、人材育成の環境も不十分だ。
「そこで、社会人としてある程度熟練したスキルを持つミドル層への期待が高まっている、ということでしょう。まだ大きなうねり、というまでは行きませんが、その『きざし』が見えてきているのでは」
日本人材紹介事業協会が発表している転職支援の「成功実績」(2012年度)をみると、36歳以上の実績は前年度比で128%と伸びている。たとえば介護施設を運営するベネッセスタイルケアでは、ホーム長候補として採用した人のうち52%が「40、50代」だという。
昨年12月に閣議決定された2014年度予算政府案では、「労働移動支援助成金等の拡充」として330億円が計上されている。これは13年度予算の23億円に比べて大幅な増額だ。背景には、「健康」や「クリーンエネルギー」といった成長戦略分野に、即戦力のミドル層を送り込みたい意図があるのでは、との見方もある。
すでに「きざし」として現れている「銀たま採用」が、今後加速していきそうだ。