「無限の可能性があると調子に乗ってしまった」
あれから、10年弱。小さな外資系企業の経営企画や、ベンチャーのマネージャー職を渡り歩き、今は、小さなITベンチャーの役員をやっているという。結婚もしていない。
「海外名門大学でMBAを取得したことで、自分には無限の可能性があると調子に乗ってしまった。時々、あのまま銀行に残っていれば…こんな苦労はしなかったのにと思うことはあります」
もっとも、彼のMBAの同期の中には「官公庁を辞めて、大手ベンチャーに行き、役員をやっている人、外資系コンサル会社のパートナーになった人など成功者もいる」と言う。
とはいえ、「そんな成功例がある時代はとっくのとうに過ぎ去った」とも指摘する。日本経済は「失われた10年」に突入し、社費で海外のビジネススクールに派遣して貰える日本人は激減した。
一方、海外MBAの学費は高騰しており、あのハーバード大学ビジネススクールの学費は実に年間5万3500ドル(日本円にして555万円前後)に及ぶ。これに生活費を加えると、独身で7万ドル、妻子がいると9万ドル以上かかる計算になる。
さらに、企業派遣は激減しているから、大半の人が、会社を辞めて、留学する。加えて、日本人のMBA取得者が増え、MBAを取得することの希少性は減ってしまった。
そんな状況下で、次なる職も定まらぬ中、大枚をはたいて留学するのは、すっかりリスキーな投資となってしまった。
そこで、最近、上昇志向の高いビジネスパーソンの間で人気を集めるのが、次回に取り上げる国内MBAだ。(佐藤留美)