日本的「発散型キャリア」とアメリカ的「吸収型キャリア」
もちろん最近は変化を見せていますが、長期雇用をベースとした日本企業で働いていると「Aという部署で○○をやって、B大学のMBAで△△をやって、Cという部署で××をやってきました。で、何だか色々できるようになったし、会社も成長した」という発散型のキャリア形成になりがちです。ゴールが「企業の将来の成長」と「そのためのマネジメントのポジション」になっていて、自分ではなく会社に力が貯まっていく、つまり会社の成功に自分のキャリアをほぼ全面的に託しているというモデルになっているのではないでしょうか。
一方、MBAでアメリカ人や留学生は「自分のキャリアゴールは○○で、だからA社で△△を学んで、B大学のMBAで××を身につけて、C社で□□を達成したい」という話し方をします。つまり、ゴールになるのは「こういう人材になりたい」「こういう夢を達成したい」ということであって、キャリアの焦点が個人にいかに能力が蓄積されていくかにある吸収型のモデルです。
企業側も、高い給与を払って踏み台にされるのではたまらないので、採用も真剣です。MBA1年生はMBAのキャリアサービス、内定を持っている2年生とともにレジュメ(経歴書)を徹底的に直したり「ケース面接」と呼ばれる「その場で戦略を組み立てる」訓練を延々としたりする。そしてしのぎを削ってインターンに採用され、夏休みの2か月~3か月もの長い時間をかけて会社と学生のフィット(相性)を判断するのです。
では、私たちが学べる「キャリア形成術」とは何でしょうか。「海外に行く」「MBAで学ぶ」、それが目的化してしまってはあまりにも浅い。昨年夏休みに日本の本屋を覗いたら「とにかく海外に行こう」と喧伝する「グローバルマッチョ」な本が多数平積みになっていましたが、何でもかんでも海外に出れば道が開けると安易に思っている人があまりにも多い気がします。「自分が将来本当にやりたいことは何なのか」「そのために何が必要なのか」「今の仕事・会社を使って何を学ぶのか」「次にやるべきことは何なのか」「それはどこでできることなのか」。MBAはこういうことをじっくり考える時間を与えてくれますが、皆さんもたまには休日に時間を取って、「会社」が主語ではない自分のキャリアについても考えてみてはいかがでしょうか。(室健)