もうすぐ新入社員が入社、不正防止は最初が肝心
これらはすべて公務員による不正である。公金横領に準ずる行為として、厳正な処分と公表が求められるためにニュースになりやすい。恐らく、民間企業でも同様の不正は少なからず起きているのだろうが、あまり公表されず、されても金額が少なければニュースにならないのだろう。いずれにしても、魔が差したでは済まされず、厳しい懲戒処分は免れない。
この手の不正の発生原因としてまず挙げられるのは、親睦会費や寮費に対する管理の甘さだろう。着服されるのは職員個人の資金であり、組織の決算には影響を及ぼさないために、内部統制の対象にはなりにくい。また、仲間内で管理しているため「まさか悪いことはしないだろう」という気のゆるみも生じやすいといえる。
しかし、もし皆さんの職場で親睦会費などを集めているのであれば、世間でこれだけの事件が起きていることを重く受け止め、次のような点から管理のあり方を見直すといいだろう。
まず、給与天引きや口座振替をできるだけ活用し、現金のやり取りをできるだけゼロに近づけることだ。現金の動きが多くなればなるほど、着服のリスクが高まる。
その上で、集金、口座入金、支払の手続きを1人に任せず、ダブルチェックや監査を徹底する。もちろん、預金通帳と印鑑の管理は別々にする。時々、抜打ち点検もしてみるとよい。
担当者を定期的にローテーションさせることも必要だ。おカネの管理は面倒なので、まめな人についつい任せきりにしたくなるが、実はその人が長年にわたり……ということにもなり兼ねない。
より重要なのは職員の意識づけだ。ほどなく4月。多くの組織に新人が加わる。新人研修でいきなり横領の話は気が引けるかもしれないが、不正防止は最初が肝心。「分不相応な生活をしない」「おカネに困ったら1人で悩まない」「1円でも横領は横領。決して許されない」「不正は必ず見つかり、キャリアは台無しになって大切な人たちを悲しませる」というメッセージをきちんと送りたい。(甘粕潔)