昨日(2014年1月31日)配信の「ブラック企業問題、ズバリ厚労省に聞く(上)~」に続き、インタビュー・意見交換の内容をお伝えする。厚生労働省の担当部局は、「ブラック企業問題」に対して、どのように取り組んでいく考えなのか。
インタビュー「上」の最後段「質問3」では、「全ての労働問題を、労働基準監督署で対処できるわけではない」といった制約などに話が及んだ。
各地の大学などで、労働局職員が無料で出張しておこなう講義も
(質問4)では、その前提のうえで、労働基準局としてはどのように対処していこうとしているのか?
<回答>相談体制等を強化せねばならないというスタンスで、実際に予算を確保して推進している。
まず、現在でも相談体制があることを周知徹底していく。各地の労基署などに設置している「総合労働相談コーナー」や、各地の新卒応援ハローワークでも相談体制を強化していく。
それに加えて、電話相談の強化だ。来年度(2014年度)予算において、委託事業で「労働条件相談ダイヤル(仮称)」というフリーダイヤルを設け、夜間休日も相談を受け付ける体制を整えることを検討している。
あとは、社会に出るまで労働法を学ぶ機会は現状少ないが、経営者も労働者も、労働法に関して意識と知識を持ってもらうようにしたいと考えている。現在でも各地の大学等に働きかけ、労働局の職員が無料で出張しておこなう講義などを進めているが、それに加えて、労働関連法規の周知徹底のためにポータルサイトを設置したり、労働法のセミナーなどを全国的に実施したりすることなどで周知徹底する。
(※筆者注)
「総合労働相談コーナー」とは、労働問題に関する相談、情報提供にワンストップで対応する窓口である。労働条件、いじめ・嫌がらせ、募集・採用など、労働問題に関するあらゆる分野についての労働者、事業主からの相談を、専門の相談員が面談あるいは電話で対応してくれる。さらに希望する場合は、裁判所、地方公共団体等、他の紛争解決機関の情報提供もしてくれる便利な存在なのだ。
(質問5)違法行為の取締についてはぜひ強化して頂きたいが、一方で現在、労基署に持ち込まれる相談案件の数が多すぎ、捌ききれていないのではと考えている。また労働者数あたりの労働基準監督官の数も、他国と比して相対的に少ない。その状況下で、どのように指導を徹底させていくのか?
<回答>ぜひ監督署としても指導強化していきたいが、人数の割に相談数が多く、どうしても優先順位はつけざるを得ない。より重大なもの、より証拠がしっかり揃っているものを優先することになる。あとは先着順だ。
監督官が日本に存在する全ての事業所を訪問するとなると、現在の監督官の人数では何十年もかかってしまう。人員増要求は以前からおこなっているが、厳しい行財政状況もあり、なかなか難しい状況だ。
そのような状況下においては、いただく情報の「精度を高めていく」取組も重要だ。
たとえば「解雇」問題については、個々人の感じ方とか価値観が関わってくるので扱いが難しい場合もあるが、「賃金未払い」や「残業代不払い」などは、事実関係の明確な証拠があれば対処しやすい。今回の「過重労働重点監督月間」でもだいぶ具体的な情報が集まった。
今後は窓口相談や電話相談、メール対応以外に、先ほど話した委託事業での時間外対応などを検討しており、労基署としてもより多くの確度が高い情報を得られる仕組みを設けて対処していきたい。
(質問6)違法行為に対して、監督官が職場に立ち入って是正指導したとしても、中にはほとぼりが冷めたかのように、再度違法状態に戻ってしまう場合がある。そのような状況にはどう対処するのか?
<回答>監督官が指導する際は、「是正が定着してほしい」という思いで、違法状態が再発しないだろうという確認をとったうえで是正完了としている。実際にILO(国際労働機関)においても、必罰というより「まずは改善させる」という手法を推奨している。
しかし、もし違法行為が繰り返される場合は、司法手続をおこなう形で対処する。たとえば「賃金未払い」は刑法犯に該当し、送検され、刑事処罰される可能性があるということをもっと知っていただきたいと考えている。
送検の事実は公表されるので、それが当該企業にとって社会的制裁になるという面もあるだろう。