社会保険労務士 野崎大輔の視点
今回のケースは「(会社が)推進」であって、「強制」ではない
労災は、仕事中に発生した怪我・病気であるかどうかという業務遂行性と、仕事が怪我・病気の原因になったかどうかという業務起因性によって判断されます。今回のケースは、会社が資格取得を推進しているだけで強制しているわけではありません。したがって相談内容だけで判断するならば、労災には該当しないと考えられます。もし資格取得が強制で業務命令と判断されたとしたら、労災に該当するおそれがあります。
滅多にない例ですが、資格試験の受験勉強が労災と判断された判例があります。土木建設会社勤務の社員が会社から技術士試験の受験を指示され、勉強を続けていたが、試験直後に脳内出血で倒れてしまい、労災による障害補償給付の支給を求めたところ、労働基準監督署長はこれを不支給としました。この結果に対して裁判所に訴えを起こし、裁判では労基署長の不支給処分取り消しを決定したという判例です。この判例では、会社が就業時間中に論文添削や模擬面接を行う等の状況から、試験の受験は業務命令であると判断されました。今回は、会社でここまでやられている様子ではありませんが、参考にして下さい。