「まだまだ充分浸透していないという認識」
(質問2)厚労省としては、「ブラック企業」の定義を何かしら定めているのか?
<回答>「ブラック企業」と言われる企業の実態は様々であり、省としては定義し難い。
定義を明確にしてしまうと、「その定義から外れるなら、ブラック企業ではない」という主張を悪質な企業に許したり、逆に、意図せずに企業にレッテルを貼ることになったりしてしまう。「過重労働」とか「パワハラによって従業員を使い潰す」など、例として挙げることはできるのだが。
確かに定義があいまいであり、識者によってかなり広範に使われ、その捉え方は様々であるので、言葉の扱いには悩んでいるところだ。
(質問3)ブラック企業にまつわるさまざまな労働問題をみていると、「労基法など法制は整っているのに、肝心の遵守が徹底していない」と感じている。これは何が問題なのだろうか?
<回答>「労基法を遵守すべきという意識が浸透し切っていない」、という現状については省としても認識している。
労働基準行政の展開として、昭和22(1947)年に労基法ができてから、最優先事項は「死亡災害などの労働災害をなくすこと」であり、長年その撲滅に力を入れてきた。昨今、ようやくそういった労働災害が減ってきたので、その分の業務量をこんどは一般的な労働環境へとシフトしてきたところである。また、毎年多数の新規起業が行われているといった要因もあり、いずれにせよ、まだまだ充分浸透していないという認識である。
また、全ての労働問題を、労働基準監督署で対処できるわけではない。
労基法等の労働基準関係法令については、監督署が監督指導に入り、違法行為を取り締まることができる。
しかしパワハラ等についての問題は、最近問題として取り上げられ、ようやく定義の議論が始まった概念であり、法令等においても定義及び取締権限について規定されていない。そのため、監督官としても取締ができないのだ。(以下、インタビュー「下」に続く)
(※筆者注)
労基署はあくまで労基法違反の取締機関であり、労働者のお悩み相談所としての役割・権限は与えられていない。詳しくは、当コラムの2013年5月23日配信記事「労働基準監督署にうまく動いてもらうための3つのポイント」を参照のこと