行動に関する「チェックリスト」制定しているところも
会社や上司への不満が鬱積している同僚にも要注意だ。不満を抑え切れなくなると「会社には貸しがある」「倍返ししてやる」という不正の動機が生じやすい。報道によると、冷凍食品に農薬を混入させた容疑で1月25日(2014年)に逮捕された製造ラインの担当者は、「同僚よりボーナスの額が少なくてやってられない」と周囲に愚痴をこぼしたり、仕事のことで上司に注意されて大声で言い返したりしていたらしく、同僚は「かなり上司への不満やストレスを溜め込んでいる」との印象を持っていたようだ。さらに、この担当者は、持ち場以外のラインをうろうろして包装前の製品をつまみ食いすることもあったそうだが、「(ちょっとした)ルール無視を平然と行う」ような不誠実な言動が目立つのも、不正を犯しやすい者の兆候として注意が必要だ。
実際に不正を犯した社員は「他の社員に仕事を分担させない」ようになる。これは、発覚するのを恐れる気持ちの表れだ。さらに、隠ぺい工作を続けるために、早朝や夜、休日などに人目を忍んで一人で仕事をすることが増えるかもしれない。部下や同僚が急にそのような行動パターンを示したら、「毎日よくがんばるね」と感心せずに、なぜそんなに忙しいのか注意深くチェックする必要がある。
金融機関の中には、過去の横領事件から得た教訓を踏まえて、部下の行動に関するチェックリストを制定しているところもある。支店長はじめ管理職は、チェックリストの質問項目に沿って部下の行動、服装や表情に急な変化がないかを注意深く観察し、異常を感じた場合は必ず面接を実施する。どこまでやるかは各企業の判断だが、参考になる取組みだ。(甘粕潔)